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写真作家によるフィルムレポート集
 
  ネガカラーの魅力発見 ウルトラカラーでフォトスケッチ 
-写真・文 大西みつぐ-

「たおやかさ」を秘めた心地よい発色性

 暑い夏が来るまでの季節の細やかな移り変わりが好きだ。そこには、開襟シャツの胸元をいくぶんゆったり広げた開放感や、新緑の葉っぱから滴り落ちる蒸せかえるような匂いが充満している。海辺、山辺はもちろんのこと、都会の路上にもそんな色濃い情緒性が漂い、私たちの押すカメラのシャッターはいつもより饒舌だ。
 そんな季節に「ウルトラカラープロ400UC」という新しいネガカラーフイルムを使った。改めて気がついたことは、ネガカラーのなんとも自然な発色性である。仮に言葉で修飾するとすれば「たおやかさ」というものだろう。これこそが本来のカラー写真の美しさなのだと思った。ウルトラというぐらいだから、もちろん飽和度の高さは十二分にある。しかも見たままの色再現にこだわっていく。それこそウルトラ級に賞賛するとすれば「職人的なフイルム」と言ってよいかも知れない。


大西作品1 かつて路上は大きなスケッチブックだった。少ない色数のチョークではあったが、そこに、はちきれんばかりの夢を紡いでいった。ある日の夕方、久しぶりに見た光景をISO400のウルトラカラーが鮮明にとらえてくれた。
ニコンF100・AF28mmF2.8・絞り優先オート・F11

大切な「普通」に写ること

 ところで、私には90年代初め、「NEWCOAST」と題して、自宅近くの東京湾岸風景をブローニー判のネガガラーフィルムで撮っていた時期がある。ベリカラーという銘柄を中心に使っていたと記憶している。ウォーターフロントとかベイエリアなどと呼ばれはじめ、東京湾岸の当時の賑わいは目にも見事に鮮やかだったが、私はあえて忠実な色彩によるスナップショットを志向した。
 結果として「普通」に写るからこそ、私たちの「環境」をしっかり見据えることができるのだという確信があった。過剰な「色つけ」は好みでもない。ネガカラーフイルムの乳剤が先天的に持つ「寛容度」の広さ( ラチチュード) を積極的に生かし、被写体のディテールやグラデーションをしなやかに再現する。そんなナチュラルな思考にこそ、真の冒険心が宿るのだ。もっとも私の冒険は、ご近所の散歩でしかないのだが・・・・。


初夏、なにをするわけでもなく近所の船だまりに人が集う。水が恋しいというのは我々日本人ならではの習性かも知れない。たくさんの物の重なりが面白く、また人々のシャツの色あいと青いドラム缶を意識し作画した。
ニコンF100 AF28mmF2.8 絞り優先AE F11
大西作品2

コダック プロフェッショナルウルトラカラー 100UC & 400UC ウルトラカラープロ400UC
400UCはISO160に迫るきめ細やかな粒状性。曇天下や光量不足時の常用フィルムとしてもおすすめです。

大西みつぐ おおにし・みつぐ
1952年東京生まれ。1974年東京綜合写真専門学校卒業。1985年「河口の町」で第22回太陽賞受賞。1993年「遠い夏」ほかにより第18回木村伊兵衛写真賞受賞。個展、企画展多数、著書に「下町純情カメラ」(2004年)ほか。東京綜合写真専門学校講師、武蔵野美術大学非常勤講師



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