状況によっては、被写界深度をあまり深くしたくない場合もあります。非常に面白い被写体を撮影するとしましょう。しかし、背景が雑然としていたら、せっかくの被写体も台無しです。このような場合は、絞りを大きくして被写界深度を浅くします。長い焦点距離レンズが使えればもっとよいでしょう。こうすれば、不要な背景をぼかすことができ、被写体への注意をそらさずにすみます。浅い被写界深度は、メインの被写体に注意をひきつけたい場合に有効です。 ほとんどの写真では、ピントの合った被写体を前景にして撮影します。しかし、ときには独創的な写真にするために、この構図を変えてみることも必要です。前景をぼかすことによって、より魅力的な人目をひく写真にすることも可能だからです。
マニュアル露出カメラの場合、絞りを調整することによって、比較的簡単に独創的な被写界深度を得ることができます。また、自動露出カメラでも、絞りとシャッター スピードの組み合せを操作できるのが普通ですので、さまざまな被写界深度が得られます。この操作には、いくつかのオプションがあります。
たとえば、被写界深度プログラム モードを備えたオートカメラもあります。このモードに切り替えると、シャッター スピードと絞りが、できるだけ小さな絞りを優先した組み合わせで自動的に選択されます。同様に、多くの自動露出カメラには、絞りを指定することによって被写界深度をコントロールできる、絞り優先モードがあります。 F /2.8 といった大きな絞りを指定すると被写界深度が浅くなり、 F /11 といった小さい絞りを指定すると被写界深度が深くなります。この絞りに合わせて、適正露出の得られるシャッター スピードが自動的に選択されます。また、全手動モードに切り替えると、手動カメラとして利用できるタイプの自動カメラもあります。
被写界深度/過焦点距離
どの程度の範囲までを被写界深度に入れることができるのでしょうか。これは、レンズの被写界深度目盛を見ると分かります。カメラやレンズにこの目盛がない場合は、取扱説明書の被写界深度表を参照してください。
レンズの被写界深度目盛は、望みの被写界深度にするだけでなく、望みの被写界深度の量にすることができます(図を参照)。たとえば、風景写真を撮るときには、できるだけ被写界深度を深くしたいはずです。遠くの景色にピントを合わせるだけでよいなら、無限遠に設定して焦点を合わせてしまうでしょう。しかし、それでは多くの被写界深度が無駄になります。最も遠くのものに焦点を合わせると同時に、できるだけ多くの前景にピントを合わせたい場合は、過焦点距離に基づいたテクニックを使用します。
過焦点距離を計算するには、まずレンズを無限遠に設定します。次に、現在の絞りでピントが合う最短距離を、被写界深度目盛から読み取ります。無限遠に焦点を合わせたとき、実用的な鮮明さが得られる範囲内の最短距離を過焦点距離といいます。たとえば、50
mm レンズを F/16 に設定して無限遠に焦点を合わせると、被写界深度目盛の最短距離メーターには 4.5m 〜 ∞ のすべてのものにピントが合うことが示されます。この場合、過焦点距離は
4.5m ということになります。
これをもとに、レンズを過焦点距離 (この例では 4.5m) に設定して焦点を再度合わせると、過焦点距離の 1/2 の距離
(2.25m) から無限遠までの範囲にピントが合います。(図を参照してください。)過焦点距離を使用することによって、設定した絞りでの最深の被写界深度を常に得ることができます。レンズの絞りを大きくするほど、過焦点距離は短くなり、被写界深度は浅くなります。
オートフォーカス カメラの場合には、自動的に選択された絞りをそのまま使うか、絞り優先モードやマニュアル露出モードに切り替えて、特殊な効果の得られる絞りを選択します。次に、レンズを無限遠に設定して、被写界深度目盛から過焦点距離を読み取ります。最後にマニュアル
フォーカスに切り替え、レンズを過焦点距離に設定しなおします。すべてのオートフォーカス カメラに、被写界深度目盛やマニュアル フォーカス機能がついているわけではありません。
中間距離範囲内のものをすべて鮮明に写せる焦点距離を把握していると、いろいろな場面でとても役立ちます。被写界深度目盛を読んでいたらシャッター チャンスを逃してしまう場合や、レンズに被写界深度目盛がない場合などには特に便利です。基本的な法則として、被写界深度の手前から約
1/3 の地点(奥から 3/2 の地点)が最も鮮明に写ります。つまり、ピントを合わせたい最も近くの物と最も遠くの物の間の、1/3 の地点に焦点を合わせるのがよいということになります。たとえば、1.5
〜 6m の範囲にあるものに対し、3 m のところに焦点を合せ、できるだけ小さい絞りを使います。この法則は、非常に近い被写体や、無限遠など被写体が極端に遠い場合には適用されません。