映写中に発生するポリエステル プリントフィルムの“ダスティング”について
ダストの元となるものは、フィルムの裏側(ベース面側)が映写
機によって剥離するために生じます。フィルム パス(通り道)の中でダメージを引き起こす可能性が最も高いのはゲート部分と、特に、フィルムをスプロケットに押しつける“シュー”と呼ばれる部分です。各フレームが所定の位置に送られるときに、シューがフィルムをこすることによって剥離させてしまう場合がよくあります。
プリントの裏側を鏡面反射光で見ると、エッジやパーフォレーション(フィルムのせん孔)の間にスクラッチ(引っ掻き傷)や剥離の形跡があることがわかります。映写機のゲートやシューの設計および材質によって、フィルムを剥離させやすいものがあります。ゲートとシューに沈着物がないようにして下さい(沈着物があるときには硬い歯ブラシと爪を使うか、マニキュア用の細いブラシなどを使用して取り除いて下さい)。
ばり、切り傷、ざらざらした部分がないか注意深く確認して下さい。
微弱な研磨性がある磁性酸化物を全面塗布した35mmシネテープ フィルムを映写機に通し、映写機の構成部品を研磨する技師もいます。ゲートと間欠シューにかかる張力をできる限り低くし、位置合わせが正しいことと、フィルムの両側で張力が均一にかかっていることを確認して下さい。
削られた屑がマゼンタ色をしている場合には、乳剤粒子が含まれていると思われます。乳剤面
が剥離したり、フィルムのエッジやパーフォレーションが擦り減ると、この種の屑が生じることがあります。新しく現像処理した“出来立て”のプリントでは、最初の数回、映写中に乳剤のダストを生じることがよくあります。
ポリエステルベースのプリント、トリアセテートベースのプリントよりもダスティングを起こしやすいという印象があるでしょうか。トリアセテートベースのプリントは、三酢酸セルロースと溶剤から成る“ドープ剤”で表面
をコーティングしながらフィルムベースの“型”をとります。 溶剤を蒸発・回収すると、固形のベース材料が残ります。トリアセテートベースは本来、無定型であるため、物性に関してはどの方向についても大きな違いはありません。
ポリエステルの場合、溶解および押し出しを行った後、分子がX軸方向とY軸方向に配向するように引き伸ばします。これにより、強度がきわめて高くなります。しかし、表面
が大幅に剥離して(Z軸剥離)、トリアセテートよりも多くの薄片やダストが生じることがあります。間欠シューの表面
が、粗いかざらざらしていると、シューの“こすり作用”による損傷が特に生じやすくなります。
ダスティング増大の原因となっているもうひとつの要因は、現像所がプリントにエッジワックス処理をしなくなったことが考えられます。エッジワックスは、ゲートやシュー部分での摩擦を減らし、剥離を少なくします。また、フィルムやパーフォレーションの摩耗を減らし、安定性を高めます。
コダックは1922年から潤滑効果のあるエッジワックスを推奨しており、現在でもそれは変わっていません。SMPTE推奨基準RP151でも、35mmプリントのエッジにワキシングを行うよう規定しています。しかし、パラフィン
エッジワックスに使用されていた塩素化炭化水素溶剤は、環境上の理由(オゾン層破壊)で段階的廃止の対象となっています。現像所でこの作業を再開できるように、コダックはエッジワックスの代替法を研究してきました。
ダスティング低減に効果的だと思われる、映写機のパーツおよびフィルムへの“応急的”潤滑剤塗布方法としては、プリントがプラッター上にある状態で、プリントの側面
にSC Johnson社の“Paste Wax”を塗り、フィルムのエッジやパーフォレーションの部分に浸透させ、必要な潤滑性を与える方法があります。
ごく微量のペースト ワックスを軟らかいバフ布を使用してフィルムの側面
全体に均一に塗ります。このプリントを次に映写機に通すときには、プラッター上で反対方向に巻かれるので、プリントの両面
にワックスを塗ることができます。ワックスが多すぎると、サウンドトラックの読み取りが妨害されたり、ワックスがスクリーンに映ってしまうことも有り得ます。また、映写
機のパーツに溜まるため、ワックスを使用しすぎないようにして下さい。ほんの少量
で効果があります。
ペースト ワックスの塗布量は、10000フィート(長編映画1作品分)のプリントで、フィルム側面
片側あたりティー・スプーン1杯を超えない程度にして下さい。このワックスを使用するとフィルムが滑りやすくなるため、フィルムがプラッター上で滑らないように必ずプラッター
クリップを使用するようにして下さい。
SC Johnson社の “Paste Wax”に含まれているワックス類とナフサ類の混合物は、少量
の使用であればフィルムを痛めないはずです。WD-40、スプレー式のワックス、オイル、シリコン等、他の潤滑剤は絶対に使用しないで下さい。粘着性の残留物が残り、フィルムから色素を浸出させることも考えられます。ペースト
ワックスは、引っ掻き傷や剥離のない新しいプリントに使用すると最も効果
的です。
映写前に、映写機のゲートやシューをワックス(ペースト ワックス、スティック
パラフィン、カルナウバ ワックス)で軽くコーティングする技師もいます。
*エスター(ESTAR)はイーストマン・コダック社の登録商標です。
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