サウンドのあゆみ
サウンドは1927年のアル・ジョルソンの 「ジャズ・シンガー」 という映画で初めて使われました。1977年には、映画界は トーキー の50周年を祝いました。
1920 年代
一番最初のサウンドは、1900年代の初期、映画と機械的に同期して33 1/3 回転で回る蓄音機の円盤から生まれました。映写技師が画と音を同期させることに常に注意していなければならなかったという難点により、画と音を同じフィルムにプリントする方法が開発されました。
1930 年代
可変濃度型と、可変面積型の二つの光学録音方式が発達しました。可変濃度型とは、音声信号と共に濃度が変化するサウンドトラックのことで、可変面積型とは音声信号と共にトラックの透明部分の形が変化するサウンドトラックのことを指します。
また更に数種の可変面積型トラックが使われました。初期のユニラテラル トラック、改良されたバイラテラルとデュアルバイラテラルトラック、そして特別なプッシュ-プル トラックがそれです。プッシュ-プル トラック方式は、その複雑さにより製作工程内でのみ使われ、公開用ではありませんでした。プッシュ-プル方式で公開された唯一の映画はウォルト・ディズニーの 「ファンタジア」 の1941年版で、それもディズニーの技師が全てをコント
ロールする特別ロードショーに限られていました。
1940 年代
光学録音の主な難点は(未だにそうですが)ノイズです。初期の頃には、ノイズを抑えるために様々な方法が試みられました。幾年にもわたり、ダイナミックレンジを広げるために可変濃度型と、可変面積型を改変したものが作られました。
ステレオサウンドの持つリアリズムは工学技師達を刺激し、より高いサウンドレベルが要求されるにつれ、可変濃度型は姿を消し、より高いアウトプットの得られる可変面積型が主流となりました。1930年の終わり頃にはベル研究所が、35mmフィルムで四つの可変面積型トラックのステレオ方式を開発しました。そして1941年には 「ファンタジア」 が最初のステレオ方式として公開されました。
1950 年代
1950年代はワイドスクリーン画像をもたらし、そのほとんどがステレオサウンドに複数の磁気トラックを使っていました。原動力となったのは、業界の脅威であるテレビに対抗しうる、より真実に迫ったエキサイティングな劇場娯楽を作ることでした。1952年の終わりには 3台のカメラ、3台の映写機、ウルトラワイドスクリーンを使う方法が紹介され、別々に別れた 7本のサウンドトラックは、画と同期して再生されました。 1953年には、フォックスがシネマスコープで 「聖衣」 を公開しました。これは標準の 35mmフィルムを使った2.35 :1のワイドスクリーン用の画面と、四つの磁気トラック─ 3本はワイドバンドの音声トラック、1本はサラウンドサウンド用のナローバンドのトラック─からなっていました。70mm 6トラック磁気録音を開発したトッド AO社は、1955年に公開した 70mmの 「オクラホマ」 で業界に革命を起こしました。この2倍の幅を持つフィルムは、非常に素晴らしい映像を実現し、また 6本の磁気録音トラックは、最高の性能を持ったステレオサウンドを作り出しました。そして多数の競合会社からは、シネマスコープ 55 、MGM カメラ 65 、シネミラクル、テクニラマ、ビスタビジョンなどをはじめとする、「改良された性能・安いコスト」などをうたった新製品が現われては消えていきました。
1960 年代 と 1970 年代
1960年代と1970年代の初めは、70mm 6トラック磁気録音と、35mmシネマスコープが最も多く用いられていました。しかし、シネマスコープに関して、経済的な問題が生じてきました。当時のシネマスコープのプリントの 90%は磁気トラックを持たず、モノラル光学トラックのみで公開されていました。そしてステレオ用の磁気トラックを持つ残りの 10%のうち大半は、プリントが磁気ステレオ再生能力を持たない劇場で上映できるように半分の幅の光学サウンドトラックも持っていました。その理由は単純で、一つ一つのプリントに磁気録音用のトラックを加え、4トラックの録音をするためには、50%から 75%多くの費用を要し、また最良の磁気音響には、磁気音響再生装置の念入りで高額な手入れが必要だったからです。
これらにかかる費用から来る圧力が、技師達に光学サウンドを見直させる結果となりました。もし光学トラックの周波数特性と S/N比を著しく向上させることができれば、それまで 1本の磁気トラックに使われていた場所に数本のトラックが録音できるようになり、磁気トラックのために特別な費用をかけずにステレオサウンドを再生できる筈でした。
1965年の半ば頃、イギリスに在住し仕事を持っていたオレゴン出身のレイ・ドルビーの開発した磁気録音用のノイズ リダクション システムは、音楽界に瞬く間に取り入れられました。1972年にはドルビーノイズリダクションが映画サウンド録音に取り入れられましたが、モノラルサウンドであり、ステレオサウンドではありませんでした。
ドルビー研究所は、コダック社の社員であるロン・ユーリグの考案した、16mm 用 2トラック 2チャンネルステレオサウンドの成功に刺激を受け、完全な互換性を持つ可変面積型 2トラックステレオ方式を開発しました。ドルビートラックを読み取るように改良された劇場では、低ノイズで比較的広い周波数帯域を持ったステレオ再生が楽しめるようになりました。しかも、標準のモノラルプリントを映写する場合でも、充分なモノラルサウンドを得ることができました。
また、ドルビー仕様のプリントは、ステレオ用装備を持たない劇場で使われるドルビー未対応映写機でも、充分なモノラル再生を行なうことができました。1974年には、可変面積型ドルビーステレオ(SVA)トラックを持った映画が 2本公開されました。1976年にはそれが 4本になり、1978年には25本となりました。1979年までには世界中で 900以上の劇場が、ドルビー仕様のSVAトラックを再生できる装備を整えるようになりました。
その当時は、4トラックシネマスコープ、または 6トラック 70mmプリントからステレオ再生できる装備をすでに持っていた劇場が、ドルビーSVAを新たに導入した場合にかかる費用は 10,000ドル~15,000ドルでしたが、モノラルトラックだけしか再生できない装置を持っていた劇場では、この費用は 15,000ドル~25,000ドルまでに跳ね上がりました。全ては劇場の入り口に、「ドルビーステレオ」と客寄せに掲げることが目的でしたが、結果的にはドルビーに資本を費やした劇場の「目玉」となりました。
この市場での他の競合会社には、カラーテク、トッド AO 、センサラウンドのユニバーサル、フォックスサウンド 360の 20世紀フォックス、そしてドライブインシアターで 「スターウォーズ」 をバイリンガルで公開したパシフィックシアターなどがありました。
1980 年代
最終的に、三つの形式が生き残りました。
- 1927年以来の標準フォーマットである35mmモノラル光学サウンドトラック、またはアカデミートラックとも呼ばれるトラック。これらは可変面積型のバイラテラル トラックか、デュアルバイラテラル トラックを持っていました。 アカデミー という言葉が作り出された理由は、1930年代後期になって、映画芸術科学アカデミーのグループにより標準化への努力がはらわれたからです。
- ドルビーノイズリダクション使用の 35mmステレオ光学サウンドトラック。今日最も一般的な 35mmフォーマットです。ドルビー研究所では、これらを SVA、またはステレオ可変面積型トラックと呼んでいます。
- 70mm磁気サウンドトラック。ワイドスクリーン画面と高性能サウンドが呼び物の、特殊な劇場で使われるフォーマットです。映画は 65mmか 35mmネガフィルムで撮影され、最終的に 70mmプリントフィルムで公開されます。65mmと 70mmの唯一異なる点は 70mmフィルムには、両端のパーフォレーションの外側に磁気録音帯の 2.5mmの幅が加えられていることです。
1980年代の半ばまでには、映画フィルム用のデジタルサウンドに対する興味が高まってきました。消費者の間に浸透してきたオーディオコンパクトディスクも、興味を刺激する一つの原因でした。このデジタル録音用の媒体は、そのほとんど歪みのない音質のために瞬く間に家庭用音響システムのテープ、LPレコードにとって変わりました。
1990 年代以降
1990年にはフィルム用のシネマデジタルサウンド(CDS)が開発されました。シネマデジタルサウンドシステムは、オプティカル・ラジエーション社と、イーストマン・コダック社の映画テレビ部門の間で共同開発されたものです。CDSはプリントフィルムに光学的に記録され、独立した純粋なデジタルサウンドチャンネルを6本持っています。CDSは1990年ニューヨークとロサンゼルスの指定された劇場で、70mm版の 「ディック・トレーシー」 の公開とともにデビューしました。
CDSは、現実と錯覚するほどの幻想を作りだすために映像製作者に音の方向や動きを正確にコントロールすることを可能にしました。独立した五つのチャンネルは、人間の耳に聞き取れる限りの広い周波数帯域と音色を再生するとともに、別のサブウーハーチャンネルが最も低いべース音の再生を行ないます。
CDSは、プリントの寿命が続く限り、一定の音質を保つよう考案されています。これまでの 35mm光学サウンドトラックや 70mm磁気サウンドトラックでは、摩滅や裂け目などがその音質劣化の原因になっていましたが、CDSではデジタルサウンドトラックにこれらに対する耐久性を持たせるため高精度のエラー補正システムを使っており、観客は数カ月たった後でも公開初日と同じクオリティのサウンドを楽しむことができます。

図 53 |
分離した音を六つの独立したチャンネルに分けることで、観客は映画の中の台詞、効果音、音楽の微妙なニュアンスだけでなく、それぞれの音源までも聞きわけることができます。
CDSの購入価格を手ごろなものにし、優れた信頼性を実現するためには、デジタルサウンドをフィルムに光学的に記録する技術に大きな技術的改革が必要でした。
1チャンネルのサラウンドサウンドスピーカーを装備している劇場は、CDSの複数チャンネルのサラウンドに容易に転換することができます。そのために必要なことは、デジタルデコーダーを映写機に取付けることと、デジタルーアナログプロセッサーを映写室の棚に置くことだけです。また、ある劇場においては、CDSが持つ能力を最大限に活用するために、より性能の良いスピーカーシステムにグレードアップすることも考えられます。
70mmと 35mmのリリース用プリントに対する CDSテクノロジーには、ほとんど違いはないのですが、CDSを 70mmフォーマットでデビューさせるという決断が下されたのは、この新オーディオシステムが、ロードショー系劇場に導入できるという理由からでした。
映画は、普通のプリント用のオーディオをデジタル光学サウンドの六つの独立したチャンネルにミキシング仕直すだけで、CDSフォーマットで公開することができます。
CDSシステムの能力を充分に活用するため、これからも録音やミキシング技術の開発が進んでいくことでしょう。更に多くのオリジナルサウンドが、デジタル技術を使って録音されたり、ミックスされたりしていますので、映画がデジタルサウンドフォーマットで公開される日も遠くないでしょう。
|