映画用ラボの作業
フィルムを選択する際に忘れがちな大事な点は、使用されるフィルムの現像条件と、製作全体を通してのプリントに必要な条件です。撮影済みのカメラフィルムを優れた映写フィルムに仕上げる高度な技術を知り、それを最大限に活用するためには、フィルムラボで使われる装置や現像について良く理解しておくことが大切です。この項では、フィルムの現像やプリント作業、そしてこの工程で使われる装置についてご説明します。
現像装置
映画用ラボでは、長尺フィルムを扱う際に最も能率のよい連続式プロセッサー(現像機)を使用しています。少量の白黒フィルムを現像するためには、違う種類の装置を作ったり、購入したりすることもできますが、この連続式プロセッサーはプロの現像に要求される質と量に見合う能力を持っています。一口で説明するとすれば、連続式プロセッサーは現像液、定着液(停止液)、水洗、乾燥の順で、フィルムを注意深く管理された速度で走行させ現像する装置といえます。また、このプロセッサーは現像する特定フィルムの液の最適温度と、攪拌条件等をコントロールすることができます。
現像 / ミキシングタンク等の材料
写真用薬材を入れたり、保存したり、混合したりするために使われる容器の材料としては、ガラス、硬化ゴム、ポリエチレン、316 ステンレススチール、チタンなどが一般的に使われています。
金属性の容器であればどれでも良いというわけではありません。錫、銅、そしてそれらの合金は薬品による深刻なカブリの原因となったり、また現像液を入れた場合には急速な酸化を起こしたりしてしまいます。現像液や定着液にはアルミ、亜鉛、亜鉛メッキされた鉄を使ってはいけません。
送り機構
何種類かの薬液に部分的、または完全に浸っているローラー群にそって、フィルムは螺旋状に走行します(図 57)。スクイージー(図 58)やワイパーブレードは異なった処理液のタンクとタンクの間にあって、フィルムの表面からほとんどの液を取り去る働きをします。プロセッサー内でフィルムを走行させるために広く用いられている方法には、スプールとフィルムベースとの摩擦を利用したフリクションドライブ方式、あるいはフィルムのパーフォレーションを利用し、スプールに取付けられたスプロケットによって走行させるスプロケットドライブ方式等があります。
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| 図 57 |
図 58 |
図 59 |
| タンクの構造と螺旋状フィルムパス |
このタイプのワイパーブレードスクイージーは多くのプロセッサーに使用されています。 |
画像部保護の為に切り込みを入れたローラーとソフトタッチタイヤが装着されたローラー |
フィルムがプロセッサーの処理液中を走行する際には、フィルムのベース側のみがローラーに接触するようになっています。こうすれば、処理液を含んで柔らかくなった乳剤面が、プラスチックスプールの表面に接触して損傷を受けることもありません。しかし、あるタイプの現像装置においては、処理液が使われていない部分(フィルムの差し入れ口と、取り出し口)で、ローラーが乳剤面に接触する場合があります。これらの接触部分では、フィルムの端かパーフォレーション部分のみにローラーが触れるように、そのローラーの切り込みが作られているものを使用します。フィルムの端だけに触れるように隆起した筋がついているローラーや、形が平らで、フィルムをローラーの幅全体に一定にサポートしたり、両像部分に傷が付かないようにするため ソフトタッチ タイヤでくるまれているローラーもあります。 図 59 を参照。
アクセスタイム
プロセッサーに関して最も広く語られ、しかし最も誤解を受けやすい二つの事柄に、スピードとアクセスタイム(現像完了時間)の問題があります。ここでいうスピードとは、フィルムのある一点が一定距離を走行するためにかかる時間を指しており、フィートまたはメーター/分で測定されます。またアクセスタイムとは、ある一定の長さのフィルムの現像が完了するのにかかる時間のことです。装置の送り機構のスピードに関わらず、(そのスピードは毎分 15フィートから数百フィートとまちまちです)それぞれの処理液が必要とする時間の総計より速くフィルムを現像することはできません。例えば、VNF1現像用に装填され、フィルムを現像している装置では、装置のスピードがどうであれ、フィルムの端が乾燥キャビネットにでてくるまでには 15分 15秒かかることになっています。しかし、現像時間
が設定された後は、様々な長さのフィルムの現像終了時間は、装置のスピードに直接関わってきます。もし装置のスピードが毎分 15フィートであれば、15フィートの長さのフィルムの現像完了に要する時間は、14分 15秒+1分です。150フィートのフィルムでは、現像完了時間は 14分 15秒 + 10分となります。
現像時間と温度
白黒現像では、現像時間と温度は各映画用ラボによってかなり異なります。フィルムを特定の現像液を使った特定装置で現像する際、各ラボでは、フィルムに適した現像時間と温度を選択します。これは 前の章 で説明したように、時間ガンマ曲線を描いて、その選択を行ないます。(使われるセンシトメーターや濃度計の種類により、コントロールガンマの値をいくらか修正する必要も考えらます。)
カラーフィルムに関しては、指定された温度の管理には非常に厳密でなければならず、特に現像液においては注意が必要です。通常、現像液の許容範囲は +/- 0.3℃ (+/- 0.5゜F) です。この許容範囲から明らかに外れてしまった場合は、フィルム感度やカラーバランスに変化が生じます。多数の映画用ラボでは、現像温度を +/- 0.15℃ (+/- 0.25゜F) 以内かそれ以下にコントロールすることを実践しており、これは一定のクオリティを得るために、有益であるという見解を持っています。プロセス ECN2では、現像温度は +/- 0.1℃ (+/- 0.2゜F) に保たれなければなりません。
白黒フィルムに比べ、カラーフィルムの現像時間の管理は非常に重要です。それはカラーフィルム乳剤に生じる様々な変化が、必ずしも全ての層に等しく起こるとは限らないからです。色の再現が不適当となるのは、いずれかの層に、感度の変化、コントラスト変化、カブリの増加が起きたことに起因します。そのため、優秀なラボでは使用する装置と材料の仕様に従って忠実に作業を行なっています。
攪拌
露光済みの写真感光材を現像液に浸し、放置したままで現像した場合、フィルムの表面に接触する現像液が疲労するため、現像の進行速度は遅くなります。しかし、フィルムや現像液を攪拌すれば、新鮮な液が常に乳剤面に流れ込み、現像は進行します。同時に、攪拌は現像ムラを作る恐れのある不均等な現像を防止する重要な効果を持っています。もし、この現像ムラが起こった場合には、できあがったプリントはしみだらけのように見えてしまいます。またもし攪拌しなければ、現像による酸化生成物を含んだ疲労した液が、乳剤の表面を濃度の濃い部分から薄い部分に向かってゆっくりと流れ、不均等な縞を作ってしまいます。つまり攪拌することで液は常に均一に保たれ、不均等な現像が防げるわけです。カラー現像の初期段階における適切な攪拌は非常に重要ですが、その攪拌テクニックは用いる現像方法や装置によって異なります。適切な攪拌を行なうには現像液の中を通過するフィルムの動きだけでは必ずしも十分ではありません。
メカニカルスペシフィケーション(機械仕様)
フィルムを現像機に通して正しく現像するためには、各々の処理液を適正温度に保ち、決められた適正な時間だけフィルムをその処理液に浸さなければなりません。それに加え、各処理液には適度な補充を行ない、フィルターを使用し、また充分攪拌を行なうことも忘れてはなりません。これらの条件は一般的に、メカニカルスペシフィケーションと呼ばれています。
現像処理の変更は、 「増感現像」 (低照明の条件下で、感度を上げる)を目的とするような場合に行いますが、その場合は現像液(カメラネガティブ)か第1現像液(リバーサルカメラフィルム)の時間、あるいは温度を調節して行ないます。
フィルムが処理液の中に浸される時間は、各タンクのフィルムパスの長さと現像機のスピードによりますが、一般的にはラックの溝の数と、タンクのラック毎のローラーの数とで決まっています。通常、各ラックの時間はラックのスレッディングを変えたり、下部シャフトの調整ができるラックを使ったりすることで変えることができます。
現像液の温度は、ほとんどの現像機で +/- 0.1℃ の誤差内に自動的に管理できるようになっています。しかし、温度調節が必要な時のため、手動で調節することもできます。またラボでは、現像機の温度計をダブルチェックできるように、高精度の温度計を用意しています。
プロセスコントロール
ネガポジ処理における現像、またはリバーサル処理での第1現像は、最終的な画質を決定する最も重要な処理液です。ここでは注意深いコントロールが不可欠です。現像は、温度や現像液(第1現像液)の薬品構成、処理時間、そして攪拌の度合いに大きく左右されます。他の処理段階においても、これらの要素は影響を及ぼします。
現像処理が全て正しく行なわれれば、現像機からは必ず「良い写真」が出てくるはずです。これらのフィルムは、ながめて見るだけでも主観的な評価はできますが、最も正確な評価は、客観的な測定法で行ないます。各ラボでは、センシトメトリー用のコントロールストリップの濃度値をグラフに表し、現像処理の状態に関する客観的な情報を得て、コントロールを行なっています。このコントロールストリップを使用したコントロール方法は、クオリティの維持を最大限にするため、現像処理の開始前、処理中、そして処理後にも行なわれます。
また、オペレーターは満足のいく結果を確実に得るために、現像機の機械的な動きも定期的に点検します。優秀なラボでは現像処理の機械的コントロールのため、以下の様な事柄を実行しています。
- 正しい現像温度を保つ。温度は常に点検し、機械が正常に作動するよう、温度計と温度コントロール装置の目盛のキャリブレーションを定期的に行ないます。乳剤のディメンションの変化を最小限に抑えるため、各処理液の温度は全て規格内に保っています。
- 指定された現像時間を守る。現像機のスピードは、決められた長さのフィルムが特定ポイントを通過する時間を測ってチェックします。種類の異なったフィルムを現像する際には、スレッディングが行なわれますので、現像時間を誤ってしまう可能性があるため注意深いラボでは、スレッディングを変えるたびに、その溶液内の処理時間をチェックします。白黒ネガやポジの現像では、9種類の現像時間を認定してある D96で数時間の間に最高7本のフィルムを処理する場合もあります。
- 指定量の補充液を補充する。補充を正確に行うことで、溶液中の失われた成分が補充され、現像能力をのばすことができ、更に現像を一定にまた効率的に行なうことができます。補充が正しく行なわれなかったためにプロセスコントロールが制御不可能な状態に陥ったり、液を無駄にしないようにするため、ラボでは補充液の注入システムが正確に作動しているかどうかが定期的にチェックされます。
- 現像に影響する条件を毎日正確に記録する。現像液の温度、処理されたフィルムの量、加えられた補充液の量、その時々に現像されたコントロールストリップのコード番号等の情報を記録しておきます。
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