クライアントが求めているコミュニケーションとは
「まず最初に、クライアントがどんな経営方針を持ち、それをどのように運営しているか。また彼らの事業がどんなものであり、彼らがどのように意思決定をするかを知る必要があります。」
コミュニケーションの問題に対する取り組み方には二通りあります。一つはクライアントに主導権を取らせる方法です。まずあなたは自分の取り組み方や似たようなケースでの成功事例を先方にアピールしてみせます。そしてさらに面会の目的をはっきり伝えるのです。これは冷静にやって下さい。あなたは仕事をキャッチするためにそこに来ているのですから、問題に意識を集中することによって、自分自身をコントロールすることができます。そして次にはクライアントの言葉に耳を傾け、クライアントがその問題を自分のものとして考えるように、いろいろ質問します。
しかしクライアントのニーズを明らかにするだけでは十分ではありません。あなたにはそのニーズを助ける使命があります。話がそこまで行って初めて解決策について話し始めることができるのです。ですから問題解決に映画を使うかどうかという以前に、他の社員も交えて、何回か会議を開く必要もでてくるかも知れません。
クライアントのニーズをキャッチするためには、何といってもコミュニケーション能力や相手の心のひだをつかむ努力が必要です。あなたは映画製作と同じくらい、マーケティングに取り組まなければならないということを忘れないで下さい。マーケティングには思いもよらない特殊能力が必要な時もあるのです。
繰り返しますが、あなたの仕事はクライアントの問題を解決することなのです。しかし、あなたはその問題を一つの方向で理解しようとするかも知れませんが、クライアントは別の方向で理解している場合もあります。注意深く相手の話を聞いて、それをうまく質問して、問題に対する明確な解決策について双方が納得・合意できるように持っていくことを考えて下さい。あなたが偉大な映画製作者になる可能性を秘めていても、目の前のクライアントさえ満足させられないようなら、この世界で食べていくことは少し考え直したほうがよさそうです。
お互いが映画の必要性に気付くまで
クライアントとの関係を保ち、ゆくゆく映画を作ってみたいと思っているなら、クライアントとの初めての面談の終わりに、あなたはある行動をとる必要があります。これにはあなたの心のコントロールが必要となりますが、それはクライアントにあなたの次の行動に対してある合意を得るということです。次の行動とはあなたが次に行なう提案ですが、それは文書形式がよいかとか、別の社員に合う必要があるか、あるいはどのようにクライアントを助けるのかなど、より具体的な話し合いを持つことです。この時点をビジネスの世界では商談の取りまとめ、 クローズ(close) と呼んでいます。
見込み客との協議を続けると、その過程の要所要所で確実に何か行動を起こさなければならない場面があることに気付くでしょう。例えば、多くの場合には、「それではこの件については先に進めてよろしいでしょうか」 とか、「それをやろうと思いますが、あなたの許可をいただけますか」 など、具体的に次のステップへ進める確約を取る行為です。
しかし積極的な回答を期待しても、相手の答えは必ずしもよいものではないかも知れません。しかし決して諦めないことです。なぜ見込み客がノーと言ったか、それをじっくり分析するのです。あなたの提案はその企業の問題を完全に解決していなかったからかも知れません。そうであれば次なる行動は簡単です。別の提案書を作成すればいいのです。または先方はあなたの力量に疑いを持っているかも知れません。その場合は、他の人々からの推薦状であなたの実力を証明させてもらえるか、クライアント側にたずねてみるべきです。
いくら相手が ノー と言い続けても、あなたがその理由を突き止めるまでは、絶対に引いてはいけません。
映画製作に実際に取りかかる前に、財布のひもを握っている人々と話をする必要があります。別の面からも提案を承認してもらわなければならないからです。クライアントが映画の創造的・技術的側面をいくら理解しても、別の方法で費用に関する話し合いを持たなければなりません。くどいようですが、クライアントは 映画そのもの を必要としているのではなく、問題の解決策を求めているのだということを忘れないで下さい。あなたが作る映画は、その問題の解決に費用の点でもすぐれているという印象を与えなければなりません。次のことを自分に問いかけてみて下さい。この会社はより多くの製品を販売することができるようになるだろうか? 社員をよりよく訓練することができるようになるだろうか? 前よりもより多くの消費者たちに効果的に情報を伝達することができるようになるだろうか?映画を観た従業員は、かかった製作費以上にやる気を起こしてくれるだろうか?
これらの質問はすべて会社の利益に直結します。企業がより多くの製品を売ることができ、より多くの仕事ができ、音声と映像を通してより多くの情報を発信することができ、なおかつ企業が映画製作にかけた費用以上の利益を得ることができれば、それは企業にとっては大きなメリットです。しかしこのプロジェクトの実行責任者にとっては、これは満足のいく「最低ライン」 だということを頭に入れておいて下さい。
「企業が求めている結果をもたらすものは何か? あなたにとっては 映画は最終製品かも知れませんが、 企業にとっては そうではありません。映画は、彼らの会社の内外のコミュニケーション問題を解決するための一助として、あなたが彼らに与える手段の一つにすぎません。」
このように、クライアントを見つけ出し、関係を保つことは、連続したマーケティング・プロセスなのです。あなたには自分自身を売り込んでいるだけであっても、映画を製作するという「事業」が実を結ぶためには、このような論理的な段階を踏まなければなりません。
基本的には、一歩づつ登るようにしましょう。もう一度整理しますが、第一に潜在的需要がどこにあるかを見つけること。第二は誰に話を持っていくべきかを見極めること。その人に会う前に二つの領域で多少の下調べを行なう必要があること。それは見込み客の組織構成とコミュニケーションのニーズについてです。そしてあなた自身を適確にプレゼンすることができるように、何を話すべきか心に決めて下さい。
見込み客に会い、質問をしながら同時に相手の話に耳を傾けて下さい。この一連の動作の中で、相手企業のコミュニケーションのニーズを見極めて下さい。ニーズを理解したなら、あなたはその企業の問題解決に力を貸すことのできる人間であることを——あなたの場合はそれを映画で行なうのですが——示して下さい。そして見込み客の反応が良かっ
たら、商談の取りまとめをしなければなりません。つまり、少なくとも特定のプロジェクトまたは会社内のニーズについて、さらに具体的に話し合うアポを取る必要があるということです。
映画製作のプロジェクトを作る決定がなされたら、あなたはクライアントが希望した内容について提案書を作成する必要があります。場合によれば、相手の取引きのメリットを詳しく述べる第二提案書あるいはそれに該当するものを作成する必要もあります。
そして最後に、製作を開始する前には契約書を取り交わさなければなりません。ここまでたどりついても、あなたのマーケティングの仕事が終わったわけではありません。これ以降、あなたはエネルギーの大半を映画製作に注ぐことになりますが、それでもなおクライアントとは密接な連絡を取り続け、映画の進み具合に関しては最新の状況を報告し、進行に従って必要な承認を得なければなりません。
映画のマーケティングは映画の製作に非常によく似ています。クライアントはあなたを観察していますし、あなたはクライアントのニーズを満たすためにあれこれと知恵を絞ります。しかし決して相手に飲まれることなく、冷静に対処するよう心がけて下さい。これが事をうまく運ばせるコツです。
映画製作者は、自分はビジネスの世界とはかけ離れた、むしろ芸術家だと思う傾向があります。しかしこのマーケティングが映画製作とは全く異質のもののように見えるとしても、やはりあなたはそれを学び、その技量を向上させなければなりません。なぜなら、マーケティングはあなたが希望する映画を作る上では、必ずその助けとなるからです。
「あなたの映画製作技術を超える次なるステージ——いわゆるビジネス・スキルは、あなたの自由を拘束するものではないということを素直に受け入れましょう。多くの若者はそれを恐れるあまり、『ビジネス・スキルを身に付けると、しょっちゅう税理士と付き合わなくてはならなくなる』と思いがちです。そうではなく、隣の人よりこの部分で少しだけスキル・アップすれば、仕事がスムースに運び、クライアントの期待をより上回ることができるということなのです。」
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