フィルムの識別
使用するラボと自分の判断基準の確立
ラボによっては、画質や実効フィルム感度に明らかな違いがでることがあり、一つのラボをとってみても、その時々による変動が見られる場合があります。典型的な現像では、プラスマイナス1/ 2ストップの感度変化や、CC10フィルターで補正できる範囲内でのカラーバランスの変化が起こることがあります。自分の選んだラボで現像されたテストフィルムは、現像に関してそのラボと話し合っていく上での基準となります。
フィルムの最終的使用段階での評価
フィルムを見る時の環境は、その映写されたフィルムのクオリティの評価にはっきりとした影響を与えます。より厳しい見方をする場合、使用条件に近い特定状況下でテストフィルムを映写し、評価すべきです。また、映写機、見る人、スクリーンの位置も画質に非常に大きく影響します。
完成作品の調子(ルック)の判断
映写された画像に対する見る人の反応には、心理的な要素も入り込むために、映写された画像はどのように単純なものでも「完璧」ではありえません。
厳密に比較すれば、あらゆる写真や電子画像記録装置と同様、コダックカラーフィルムは画像と被写体の間にわずかな違いを示します。普通、これらの違いはそう大きな意味を持ちませんが、シネマトグラファーは、そのフィルムの調子(ルック)が彼らの意図や、主題の性質にあっているかを判断しなくてはなりません。
カラーバランスに対する製造メーカーの評価は、多くの人間によるテストの判定結果から決定されていますので、シネマトグラファー、プロデューサー、ラボの方一人一人が、製造メーカーが望ましいとしたカラーバランスとは違ったバランスを好むことがあるのは当然です。
全ての人の好みやあらゆる仕事の条件に合うようなカラーバランスを製造メーカーが判定することはできませんので、厳正さを要求される仕事においては、最終的な使用に最も近い条件で、できれば実際の被写体を使ったテストをしてから仕事に取りかかるべきです。最終的に撮影に使われるフィルムは、同じ乳剤番号を持ったフィルムでテストされ、撮影前も撮影後も同じ条件で保管されなければなりません。露光時間、光源、現像条件なども、最終的な仕事に使用される予定のものと同じものでなければなりません。
特定の色再現のチェック
わずか三つの色素によって、カラーフィルムはあらゆる美しい色合いを作り出すことができます。しかし、フィルムが正常に製造、保管、露光、現像されているにもかかわらず、ある特定の色の正確な色再現に関して問題の生じることが時々ありますが、幸い、こういう問題を生む状況はまれです。
人間を写す写真が非常に多いことから、人間の肌の色をきれいに再現できるということはカラーフィルムを作る上で重要な課題です。同時に重要なことは中性色(白、灰色、そして黒)の再現と、人が皆持っている青い空や緑の芝生に対する "記憶" の色(メモリーカラー)の再現です。フィルムは様々な状況下でこれらの重要な色を的確に再現するよう作られているため、より重要度の低いいくつかの色、例えばライム、ピンク、オレンジなどのよ
うな色はそれほどきれいに再現しない可能性もあります。(これらの色をよりよく再現するフィルムの考案は可能ですが、その場合、より重要な肌の色や、芝生の色を犠牲にしなければなりません)。カラーフィルムは人間の目と全く同じ感度を持っているわけではありませんので、この他にも問題は生じます。しかし、ほとんどの被写体の場合では、フィルムの三つの感光層が人間の目と全く同じように「見える」必要はありません。ほとんどの場合、その違いは目にはわからない程度です。
時には、フィルム感度と視覚的感度の違いで、結果が思ったようにならないことがあります。カラーフィルムは紫外線に敏感であることから、紫外線を反射する物体は実際に目に見えるよりも青っぽく写ります。もしこれが初めから青いのであれば、ほとんど違って見えません。しかし他の色ではこの青みは元の色を中性色にするか、またはほとんど青色にしてしまいます。中性か、中性に近い色は色の濃さが足りないため、そのような色の変化に影響されやすいのです。例えば人工材を使った黒のタキシードが青く写る場合もあります。 コダックラッテン ゼラチンフィルター No.2B のような紫外線吸収フィルターを、レンズまたは光源に使うことで、この問題はある程度解消できます。
これに近いものに、蛍光性紫外線の影響があります。ある布地は紫外線を吸収し、可視光域の青色に近い部分(最も短い波長)を反射します。肉眼では、可視光域のこの部分はあまり感知されないことから、被写体を写真で見て、初めてこの影響に気づきます。これに近い視覚的な効果は、特殊塗料やある種の布地などを闇の中で 光らせる ブラックライト によって作りだすことができます。
紫外線のランプの下では、漂白剤の付いた布地は全て蛍光を発します。白い布地の多くは製造中、または洗濯などで、布地をより白く見せるために漂白剤が使われており、蛍光性の問題があるかどうかは、疑いのある布地を紫外線の光源下で調べることで大体知ることができます。この問題がある場合、レンズに付けるフィルターでは解決できません。しかし、紫外線を吸収するものを光源に取付けることで解決できます。紫外線域の再現性にかかわる問題にどう対応するかは、写真テストをすることが最も良い方法でしょう。
おそらく最も厄介なことは、変則反射といわれる色再現性の問題です。この問題は、人間の目では感じられない分光の赤の終わり部分と赤外部分の反射で起きます。目を見張るほど美しく青い朝顔の花などは、自然に在る色の中でもうまく再現できない色の例であり、その理由はカラーフィルムが人間の目よりも赤のスペクトルに敏感だからです。人工生地の中でも、ある種の有機染料は赤のスペクトルに高い反射率を示す好例です。現在では、これらの染料は安価で、また人工生地に用いやすいため、布地製造会社で最も多く使用されています。これらの染料が持つ、赤と赤外のスペクトルに対する高い反射率は、全ての色に見ることができますが、これらの赤のスペクトルの反射に対する写真的効果は緑色をニュートラルにする傾向が顕著であるため、中間の緑色や濃い緑色は茶色っぽく写ります。
スペクトルの赤の終わりの方に対する高い反射率は、コダック ラッテン ゼラチンフィルター No.70のような深い赤色フィルターを使うことで確認できます。このフィルターを通して、布地をタングステン灯の下で調べると、自然繊維で織られた布は黒く見え、赤のスペクトルの高い反射率を持つ合成繊維で織られた布は、もっと明るく見えます。判断は数量的に行なわれるため、再現性のよくわかっている緑の布とテストする布とをこのフィルターを使っ
て比較すると良いでしょう。No.70 のフィルターを通して二つを比較し、テストする布がはっきりと明るく見えるようであれば、色再現性に問題があるのは明らかです。とにかく、状況が許す限り、実際の使用条件で写真テストを行なって確認する方法が望ましいでしょう。
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