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SHOOTING eye
 CLOSE SHOT
   
渡部眞氏
撮影監督
渡部 眞氏 J.S.C.



映像とはキャメラで語ること
演出や芝居に合った映像を撮る


渡部眞氏
『西の魔女が死んだ』の撮影風景。
撮影:渡部眞氏、撮影助手:青木聡氏、照明:和田雄二氏、監督:長崎俊一氏、助監督:原桂之介氏(左から右へ)。
©2008「西の魔女が死んだ」製作委員会」

『西の魔女が死んだ』は数々の文学賞に輝く梨木香歩さん原作のロングセラー小説の映画化です。夏の始めにどうしても学校へ行けなくなった中学生の主人公が、おばあちゃんとの生活の中で、自然と触れ合ううちに生きる楽しさを再発見していく物語です。長崎俊一監督の演出を支えたのは劇映画、CM、大学教授と幅広く活躍されている渡部眞さん。映像で物語を語ることについて伺いました。
 

監督と共に表現を練り上げる

プロデューサーの柘植靖司さんと長崎監督の3人で話をしていて、原作者の意図に近いものを作りたいという思いはありましたね。物語の主人公は外国人のおばあちゃんと3世の孫という設定ですが、面白いことに孫が日本の空間に生きていて、おばあちゃんは日本に居るんだけれどもアイルランド風の空間で生活しているという設定なんですね。“そこをどう表現するか?”監督とはそんな話をしていました。
 

照明へのこだわりとフィルムの描写力

家のリビングで手前まで綺麗に映りこんでいたカットでは、奥行き感を表現するためトーンに気を付けました。リビングにはかなり強い光を入れていますが、そのままだと、ただ明るいだけになってしまうので、“いかに陰影をつけるか?”という点で苦労しましたね。基本的には外から強い光を当てておいて、中はそれほど上げないような感じです。それが多分外国的な雰囲気を醸し出しているのだと思います。照明の和田雄二さん と一緒に検討しながら作って行きました。

渡部眞氏
サチ·パ—カ—さんと高橋真悠さんに演技指導する長崎監督。
©2008「西の魔女が死んだ」製作委員会

今回使用した機材は、アリフレックス535 です。レンズは主に普段から使い慣れているクックのS4を使っています。

フィルムはVISION2 Expression 500T 5229とVISION2 200T 5217 です。屋内シーンとかちょっと暗めの所や夜は5229、昼は5217が中心と使い分けています。これまではずっと感度500ベースのフィルムで通していたんです。フィルムを使い分けることで混乱すると事故にも繋がりますし、どうしても低感度で撮りたい時は、減感すれば良いわけで、それでも十分使えるレベルまでフィルムは良くなっています。けど、今回はちょっと粒状性 のいい滑らかな映像が欲しいなと思ったので、デイシーンでは5217を使いました。初めは5217の部分が“硬くなりすぎるかな?”という不安を持ったのですが、結果としては5229との繋がりは全く違和感がなかったですね。それから、時間の移り変わりの所では、スキャニングして、CG処理をかけましたが、凄く馴染みが良かったですよ。

森の中の撮影では暗部を中心にして露出を考えないといけないので、むしろハイがどんなふうに飛んでいくか、飛ばした時にフィルムがそれに耐えられるかを心配していました。結果として色の調子は良く、ラチチュードが広いことを実感しました。
 

渡部眞氏
撮影中の渡部眞氏。
撮影:前田昭二氏
演出と連携した画作り

映像を褒められるよりも演出を褒められた方が僕はうれしいですね。それは演出に一番合った画になれば最高の仕事だと考えているからなんです。ですから「長崎俊一の画を作り上げている」と言われるのが僕に対して最高の褒め言葉です。撮影では、緊張感をはぐらかさないよう注意しています。そのために微妙な移動とかをかけて撮るんですけど、それには有能な特機部の人が必要になります。芝居の動きと、キャメラとがマッチングするのを狙っているからなんです。

今回の撮影期間は1箇月強でした。僕は撮影自体に時間をかけないんですね。現場では悩みません。監督は演出上で悩むことが必要ですが、技術者は悩まないようにしないといけないんです。そのために準備は徹底的にやっています。助手にもいつも言ってますけど、「テーマは早く終わること」です。(笑)

日本の現場はかなり過酷で、助手さんは撮り終わってからも2時間は作業しなくてはいけませんしね。事故が起きないようにしたいというのもありますし、監督がバリエーションが撮りたいと言った時に対応もしたいですし……。天気の対応もこちらの準備次第です。例えば、霧の中のシーンがありますが、霧が出ている時にすぐに決めておいた現場に行けるよう、常に用意していました。
 

渡部眞氏
撮影中の渡部眞氏。(右)、左は撮影助手の佐藤康祐氏。撮影:前田昭二氏
キャメラで語るということ

アメリカでの恩師のトニー・ベラーニから“映画の為のキャメラ”というのを教わりました。物語はキャメラでも語らなくては駄目だと。これは例えば高校生の女の子が3人正面からキャメラに向かってきます。その時に、一人が「じゃあね」って家に帰る。その帰る女の子をスーッとキャメラが追うと、それだけでもうこれはその女の子の話になる。それがキャメラで語るということ。単にパンしかしていないけれど、3人の画から1人を追うっていうことだけで彼女の話になる。特別な画ではなく、普通の画で物語を語れれば、それが良いキャメラマンなんだというのを教わりましたね。

長崎監督と『誘惑者』を撮った時のことです。秋吉久美子さんと精神科医役の草刈正雄さんが主役で、病気の告白をするシーンがあるんですが、そこでは光が夕方からだんだん夜に変わっていくことで病気が深まるのを説明している。とても印象的です。大先輩の宮川一夫さんの提案だったんですが、心の中を語るのに光を使うというのは凄いなと思いました。
 

昔の人たちと仕事をしてみたい

技術的なことでは、全部DI というのは、一度やってみたいと思っています。それから撮影についての夢は昔の人たちと仕事をしてみたいですね。学生たちに『市民ケーン』とかを見せると撮影技術の高さに愕然とします。昔の人の作品を見れば見るほど今の技術が落ちているなと感じます。演出の人とベストマッチングしながら、ワンカットで長く撮れるような領域を極めたいですね。

『誘惑者』(1989年、長崎俊一監督)
『市民ケーン』(1941年、オーソン・ウェルズ監督)
 

● Profile. わたなべ・まこと
■1953年東京都出身、早稲田大学文学部演劇学科卒、アメリカA.F.I.シネマトグラファー科卒(Master of Fine Arts取得)、名古屋学芸大学 メディア造形学部教授、早稲田大学芸術学校空間映像科 非常勤講師。 ■1978年、伴睦人監督『杳子(ようこ)』でデビュー。 ■主な作品/● 映画:『の・ようなもの』(1981年 / 森田芳光監督)、『グッドバイ、夏のうさぎ』(1983年 / 山名兌二監督)、『The Lawless Land』(1988年 / ロジャー・コーマン監督)、『誘惑者』(1989年 / 長崎俊一監督)、『Out of the Rain』(1991年 / ゲーリー・ウィニック監督)、『Little Noises』(1992年 / ジェーン・スペンサー監督)、『大失恋』(1995年 / 大森一樹監督)、『らせん』(1998年 / 飯田譲治監督)、『ショムニ』(1998年 / 渡邊孝好監督)、『千年旅人』(1999年 / 辻仁成監督)、『五条霊戦記』(2000年 / 石井聰亙監督)、『ありがとう』(2006年 / 万田邦敏監督)、『接吻』(2008年 / 万田邦敏監督)ほか。 ●CM:アサヒ・ワンダ、リポビタンD、サントリー・ボス、ローソン、全日空ほか多数。 渡部眞氏

監督:長崎俊一
原作:梨木香歩「西の魔女が死んだ」新潮文庫刊
主題歌:手嶌 葵「虹」
主演:サチ・パーカー、高橋真悠、りょう、大森南朋、高橋克実、木村祐一

©2008「西の魔女が死んだ」製作委員会
配給:アスミック・エース
公式サイト http://nishimajo.com/
公式ブログ http://blogs.yahoo.co.jp/nishimajo_movie

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