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Cinematographer 瀬野 敏氏
色々な“白”を記録する フィルムだからこそ可能になった 幅広いトーン再現 |
日本を代表するテレビコマーシャル作品の撮影に携わってきた瀬野敏さん。ディレクターの厚い信頼を受けて、時代を代表するテレビコマーシャルの多くが瀬野さんのキャメラによって写し取られてきました。今回は、資生堂「白ツバキ」のCM撮影について伺いました。
ファーストシーンとしてのインパクト
2007年のCM、「白ツバキ誕生」篇では、6人の女優さんを起用した6つの作品が制作されました。蒼井優さんのCMが最初に放映される予定でしたので、画面内の白の面積をしっかり取って、“白”の印象を鮮明にしました。都会をイメージさせるニューヨークの街並みをダイナミックなキャメラワークで表現して、それに蒼井優さんのカットが続きます。ここでは、後ろから光を当てて髪に反射させているのですが、光が強すぎるとフレアが多くなり、顔がぼやけてしまいますし、かといって、後処理でフレアのエフェクトをかけてもウソっぽくなってしまいます。そこで、適度なフレアで収まる程度に強めのライトを後ろから当て、後からその上にエフェクトを重ねました。
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"NYの街並みをモーションコントロールキャメラで撮影。 |
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スタジオの巨大セットで街並みのシーンを撮影。この映像は、NYで撮った街並みの風景と合成された。モーションコントロールキャメラはNYの街並みを撮った時と同じ動きをする。 |
NYを撮るということ
ディレクターのこだわりは、白ツバキのCM中、随所に表われていて、作品にインパクトを与えています。都会のイメージにもこだわってニューヨークでロケしています。しかし、撮る側としてはニューヨークはなかなか難しい被写体です。へたに切り取ると東京と変わらなくなってしまう。背景に見える高層ビル群の密集した様、ビルの外壁や窓に感じられるミッド・センチュリーの雰囲気など、東京にはない造形を追求し、ニューヨークらしさを出すことに成功しました。
減感によってバリエーションのある“白”を撮る
2008年に放映された「新 白ツバキ」のCMでは、“白”というコンセプトをしっかりと押さえながら、日本人の黒っぽい髪を美しく表現すること、白いツバキのセットや微妙に異なる衣装の質感、バリエーションのある白を再現することが求められました。それを可能にしたのが、フィルムのラチチュードです。表現のためには真っ白なイメージで画作りしたい。でも、ハイが飛びすぎてもいけません。例えば、女優さんの髪に合わせて露出を決めると、どうしても背景の白の部分はライティングでコントロールしなくてはならなくなります。そうすると、白の自然な輝きが出て来ないんですね。ある程度、ハイが飛んでいないと光沢感が表現出来ませんから、いかに抑える所は抑えて、飛んでいい所だけ飛ぶようにするか。その解決策として、1/2減感を行いました。こうすることで、ネガに記録された映像はフラットになり、トーンの記録範囲が広がります。その後、テレシネの段階で圧縮されていたトーンを広げていくと、意図した通りキレイに仕上がりました。アイデアを聞いた段階で、1/2減感という方法に確信はありましたが、念のために事前にテストしてから決定しました。
今回使用したフィルムはVISION2 250D 5205です。髪の柔らかさを表現するためにハイスピードで回しています。僕は、普段、スタジオでは5205 250D、屋外なら5201 50Dを使います。
白ツバキは、ダメージケアの補修を特徴とする商品ですから、髪の美しさと艶に重点を置くような撮り方が求められます。もちろんコンセプトである“白”もしっかりと表現しなくてはなりません。その上で、印象的な映像を作り出す……。演出部と撮影部がせめぎ合うことで、両方を可能にする映像を残すことが出来ました。
アンサンブルキャストの為の解決策
このCMでは合計で12人の女優さんが登場しています。いずれも日本を代表する方々ですから、スケジュールの調整も大変です。集合のシーンも一度に撮ることは出来ませんので、一人ずつ別々に撮影し、後から合成しています。実際の作業としては、事前にコンピュータによるCGシミュレーションを行い、セットでの立ち位置やライティングを予め設定します。現場では、CGシミュレーションのデータをモーションコントロールに入れて撮影しました。キャメラの動きは常に同じなので、後から合成してもそれと分かりません。
ライティングもシンプルにすることで、最終的な調整をしやすくしています。具体的には、どの女優さんに関しても、照明を同じライティングで当てているんですね。後はフォローを少し使用する程度です。そうすると、変な影は顔の中には出ません。さらに1/2減感によって、幅広い階調をフィルムに取り込むことが出来、後から調整することが可能です。このような場合、現場で細かなライティングの調整をやってしまうと、集合シーンを合成した時、結果がバラバラになってしまいますから……。
デジタル時代だからこそ、フィルムを美しく見せたい
自分自身はフィルム出身なので、ぜひフィルムにがんばって欲しいと思うんです。僕の考えでは、フィルムの持つ情報量のすべては、デジタルでは表現出来ていない。HDキャメラは進歩しましたが、それでもセンサーの性能はフィルムに追いついていません。だから、現在の所、フィルムとデジタル、ポストプロダクション技術、すべてを考慮に入れた上で、最もキレイに表現出来る方法は、『フィルムで撮影し、HDでカラコレすること』だと思います。
フィルムの良さというと、昔のフィルム映像をテレビ画面で見た時の粗さを再現してみたり、銀残しをしたり、わざと粒子を出すといったことを挙げることがあります。しかし、僕自身はもっと基本的な所でフィルムの良さ、すなわち『幅広い色再現』、『ハイライトからシャドウまでのトーン再現範囲の広さ』をいかに生かしていくか、に力を注いで行きたいと思っています。
| ● Profile. せの・さとし |
| ■1951年京都府生まれ。東京造形大学卒業。 ■東北新社CM撮影部を経てフリーランスとなる。 ■主な作品/●CM:日立『ブルーレイカムWooo「残してあげたい」篇』(2008年)、明治製菓『フラン アロマティエ「香り変身」篇』(2007年)、資生堂『白TSUBAKI「蒼井優」』(2007年)※2007年より資生堂『TSUBAKI』の撮影に部分的に参加、サントリー『ペプシネックス「沢尻エリカ」』(2008年)、ダイドードリンコ『D-1 COFFEEファインクリア』(2008年)ほか多数。 ●映画:『ウール100%』(2005年 / 富永まい監督) |
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「白ツバキ誕生」篇 蒼井優 主要制作スタッフ
■ 広告主: 資生堂
■ 代理店: 大貫デザイン、ADK
■ 制作会社: 東北新社
■ プロデューサー: 羽生浩一、天野孝之、 町田和幸、大垣暁、戸田和寿、佐藤慶
■ ディレクター: 黒田秀樹
■ 撮影: 瀬野敏、別班として小暮徹
■ 照明: 津嘉山誠、別班として嶋竜
■ 美術: 舛岡秀樹、小林康秀
■ 衣装: ソニアパーク
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「新TSUBAKI 白」篇 主要制作スタッフ
■ 広告主: 資生堂
■ 代理店: 大貫デザイン、ADK
■ 制作会社: 東北新社
■ プロデューサー: 羽生浩一、天野孝之、 町田和幸、大垣暁
■ ディレクター: 小野田玄
■ 撮影: 瀬野敏、別班として小暮徹
■ 照明: 津嘉山誠、別班として嶋竜
■ 美術: 小林康秀
■ 衣装: ソニアパーク
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