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SHOOTING eye
 CLOSE SHOT
   
笠松則通氏
撮影
笠松則通氏 J.S.C.



闇を捉えたのは
確かな撮影技術だった


阪本順治監督の最新作「闇の子供たち」は梁石日(ヤン・ソギル)氏の問題作の映画化です。撮影は阪本監督のデビュー以来、ほとんどの作品を手がけてきた笠松則通氏。タイを舞台に、人身売買、幼児売買春という困難なテーマに挑み、観客の心にずしりと響く映像を作り上げました。映像にかける思いと撮影について伺いました。
 

「闇の子供たち」の1シーンより
「闇の子供たち」との出会い

初め、プロデューサーの椎井友紀子さんから言われて原作を読んだのですが、タイのアンダーグラウンドで行われている現実を凄まじい筆致でえぐりだした内容に大きな衝撃を受けました。ちょうどその頃、妻が出産を控えていたんです。作品のテーマを考えると、新たな命の誕生を目前にしている自分が撮影する意義はとても大きいのではないかと思い、お引き受けしました。
 

タイでの現地ロケ

4月に約1箇月をかけて現地ロケを行ったのですが、スコールには悩まされました。日によっては、夕立のような豪快な雨が2時間ぐらい降り続くんです。晴れで撮り始めていても、途中で雲が出てきてしまい、撮り直さなければならないこともありました。4月の中旬は、タイのお正月にあたり、“ソンクラーン”という水かけ祭があります。誰かれ構わず水をかけて白い塗料を塗られるんです。現地の人からは撮影にならないと言われていたのですが、お祭りは4日ぐらい続くので、結局、1日だけ休んで、後は撮影を続けました。かなりのドンチャン騒ぎなので、音のこともあって、騒ぎを止めにいったりするのが大変で、でも誰も聞いてくれませんし……。

治安が良くない場所で撮影する時には、私服のポリスが付いていてくれました。何か問題があったら、ポリスが出て来ることになっていたのですが、実際にからまれたりすることはなかったですね。やはり、本当に危険な場所では撮影出来ないので、どこにでもある路地を使って、ライティングで雰囲気を出すようにしました。
 

作品を支えたVISION2 500T 5218

「闇の子供たち」の撮影風景

撮影機材とフィルムは日本からの持ち込みです。手持ちが多くなるだろうと予測していましたのでキャメラは軽量のアリカムLTを選びました。レンズはツァイスのプライムが多いですね。フィルムはVISION2 500T 5218の1種類で通しています。どの感度のフィルムをどのくらいの分量で使っていくかというのが、事前に予測出来なかったんですね。使い分けしようとすると、結局は分量が増えてしまうので、思い切って1種類にしました。現像は、日本へ送り返すのが難しかったので現地のテクニカラーにお願いしています。ラッシュも頭の2~3日分だけで、後はビデオデイリーで確認しました。

阪本監督はいつもフィルム前提で撮影をする方です。ビジコンも覗かないし、編集もAvidではなくフィルムです。私自身も、今の所は、フィルムでやれるものであればフィルム以上はないなと思います。フィルムの撮り方が好きだというのもあります。
 

厳しい環境での撮影

昼間のシーンでは、熱帯の強烈な光の強さを出すために、通常よりも絞りを開け目にして撮影しています。そうすることで暗部が補われるという利点もあります。

撮影中の阪本監督と笠松氏
撮影中の阪本監督と笠松氏

売春宿のシーンは、廃墟みたいな所にセットを組み込んでいました。エアコンもない密閉された場所。しかも外の気温は40度以上です。簡易なスポットクーラーは入れていましたが、音が出てしまうので本番中は止めなければいけません。さらにライティングもしているので湿気と暑さで大人でもぼーっとしてきちゃって、そんなに長い時間はリハーサルも出来ません。出演者にも子供が多いので、立ち位置を指定してもなかなかこちらの思う通りに動いてくれないかなというのもあって、その都度キャメラ位置を変えて行こう、その方が面白いですね、と、監督と話していました。そうすると手持ちが多くなりますよね。それがドキュメンタリースタイルというか、映像に緊迫感を与えています。

出演した子供たちは約100人の中からオーディションで選ばれたんですけど、同年代の日本の子供と比べるとかなりしっかりしていましたね。暑い場所でも集中力を失わないで演技してくれましたから。しかも内容はシリアスで、人が死んだりとか、自分が男の裸を前にしてだとか、あるいは殴られるとか……。子供たちは選考段階で事前に説明を受けていますが、撮影前に、子供に「わかった」と言ってもらうまで、監督が改めて説明していました。子供たちがいるシーンでは、監督は常にキャメラの横にいてコミュニケーションを取っていましたね。

夜の街の屋外ロケは、娼婦が立っているような所ばっかりなんですよね。路上でそのまま撮影する形なので、ライティングも出来ないんです。照明を当ててしまうと、人がどんどん逃げてしまいますし。ノーライトで手持ち、レンズも開放でみたいな状況でした。写っていればもうけものみたいな感じですが、しっかり再現出来ていました。
 

海外で仕事をするということ

スタッフは、日本と現地の技術スタッフとの混成でした。そうしないと、撮影が危険だからということもあります。通訳を通してコミュニケーションするのですが、言葉が違っても同じ仕事をしている人たちなので、そのうち自然に意思の疎通が出来るようになって行きました。

「海外のスタッフと一緒に仕事をしたい」という希望はありますね。苦労する分、楽しみも多いと思うんです。日本人同士なら、しゃべらなくても通じるってことがありますよね。でも言葉や文化が違うとそうはいかない。違いを乗り越え、理解を築き上げていく作業は面白いしやりがいもあります。今回は結構日本人スタッフが行っていますが、自分1人だけで海外で、みたいな仕事もやってみたいという思いはありますね。
 

● Profile. かさまつ・のりみち
■1957年愛知県生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。 ■『赤目四十八瀧心中未遂』(2003年 / 荒戸源次郎監督)で毎日映画コンクール撮影賞、『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』(2007年 / 松岡錠司監督)で日本アカデミー賞優秀撮影賞受賞。阪本監督とはデビュー作『どついたるねん』(1989年)からコンビを組む。 ■主な作品/『亡国のイージス』(2005年 / 阪本順治監督)、『いつか読書する日』(2005年 / 緒方明監督)、『さよなら、クロ』(2003年 / 松岡錠司監督)、『KT』(2002年 / 阪本順治監督)、『青い春』(2001年 / 豊田利晃監督)、『顔』(2000年 / 阪本順治監督)ほか多数。 笠松則通氏

闇の子供たち
原作:梁石日(ヤン・ソギル)「闇の子供たち」幻冬舎文庫
監督・脚本:阪本順治

江口洋介、宮﨑あおい、妻夫木聡、プライマー・ラッチャタ、プラバドン・スワンバン、佐藤浩市

2008年8月2日より シネマライズ他にてロードショー
© 2008映画「闇の子供たち」製作委員会
http://www.yami-kodomo.jp/

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