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ディレクター 細井威良氏 (ザ・シズル 細井企画演出事務所)  シネマトグラファー 山内康廣氏 |
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二度とは訪れない瞬間をフィルムへ焼き付ける シズルの撮影にかける確かな技術と熱い思い 受け止めたのはVISION3の優れた描写力だった
映像の分野ではすでに欠かせない概念となった“シズル”感。その重要性と面白さにいち早く気付き、シズルの演出の専門家として存在を確立した細井威良さん。そして、細井さんの右腕としてCMをはじめ数々の映像作品を撮影してきたキャメラマンの山内康廣さん。今回はお二人にVISION3の使用感とシズル感を演出する映像制作の極意を伺いました。
フィルムが進化してこそ、映像は次の次元へ
――16mmでのシズルの撮影。今回バーミヤンのCMで使用されたVISION3 500T 7219の使用感はいかがでしたか?
細井 「VISION3 500Tは、テレシネで見ても良かったですね。16mmの長所を十分に引き出してくれるフィルムです。だから使っていても安心感がある。特に色がいいですね」
山内 「新しいものが好きなので、VISION3 500T が出たと聞いて、すぐに使ってみたのですが、凄く良かった。以前のVISION2 も、黒の締まりが改善されていて素晴らしかったのですが、今回はそれを上回っていて、『こんなにいいフィルムが作れるなら、コダックさん、早く作っといてくださいよ!』と思いました(笑)。16mmは35mmより撮像面積が狭いので、テレシネではより拡大することになります。このため16mmの方がフィルムの特性がはっきり出てきます。私は、常日頃『映像の暗と明の両方を高いクオリティで生かしたい』と考えています。その点、このVISION3 500Tは素晴らしかったですね。白の再現に有効とも言えます。キャメラがいくら改良されても、フィルムが進化しないと映像はけっして良くはならないんです。技術的なことを言えば、20 年前のキャメラを使っても、今のキャメラを使っても同じ。大事なのは『どんなフィルムを使うか』です」
――なぜ、デジタルでなく16mmなのでしょうか?
山内 「16mmだと、優しい風合いになるんですね。デジタルだと映像が鮮明すぎてギラギラしてしまいます」
細井 「皆さん意外に思われることが多いのですが、35mmに限らず、16mmでも十分クオリティは保つことが出来るんですよ。16mmだとまるで人の目のようなニュアンスが再現出来ます。HDで食べ物を撮ると、料理番組のように味気なくなってしまう。それにシズルの撮影では瞬間を捉えるのが大切なので、機動力と流動性が求められます。35mmでは限界があります」
やり直すことの出来ない一瞬を捉える
――お二人は長くコンビを組んで、シズルという難しいテーマに取り組んでいらっしゃいます。
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強烈な光の中でのハイスピード撮影、フォトソニックスを構える山内氏。 |
細井 「シズルの一番難しい所は、やり直しがきかないこと。コンピュータで制御される装置などを制作し、一瞬を捉えることが出来るよう、緻密に計算し、万全の準備をして撮影に挑むわけですが、やはりベストなカットは1度きり。命がけです。山内キャメラマンは長い間、スチルカメラマンのアシスタントをしていました。自分もそう。波長が合うと言いますか、ジャズのセッションのように作業を進めることが出来るんです」
山内 「セッションだけに、現場で決めていたことを急に変更、なんていうこともしょっちゅうですけどね」
細井 「それは、山内君が変えるからじゃないか(笑)山内キャメラマンとは、7、8年一緒に仕事をしています。アメリカだと、食事シーン専門の“テーブルトップ”という職種がある。だけどこれまで日本にはなかった。2000年頃にこれから自分が進みたい方向性を考えた時、行き着いたのが“シズル感”でした」
――“シズル感”の演出とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?
細井 「視覚情報は、まず目から入ります。次に、脳。好きな食べ物を目の前に出されると、人間の目は自然にズームレンズのようになって、その食べ物にぐっと近づきますよね。その感覚を大事にしたいので、撮影現場では主観を大切にします。その一方で、先入観は取り払っていく。例えば、カレーのルーをライスにかけるシーン。以前は、日常の食事の動作をアシスタントが再現してルーをライスにかけ、それを撮影するのが当たり前でした。でもそれではシズル感は出ないんです。そこに、不思議、ロマンチックな要素が不可欠。『食べてみたい!』と思わせることが必要です」
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シズルの撮影風景。機材などで広いスタジオもいっぱいに。 |
山内 「人が実際に見た感覚に近く、かつ、美しく撮るためにツァイスのプライムレンズをメインに使用します」
――お二人の撮影では、ハイスピード撮影を多用されるそうですが。
細井 「ある時、16mmを使って300や500コマ/秒で撮ってみたら食感が見事に再現出来て、それからクセになりましてね。液体の動きも300コマ/秒で撮影すると、実に柔らかくて美しい動きを出してくれます」
山内 「食品の場合はハイスピードが多くなります。バーミヤンのTVCMの場合は、16mmを500コマ/秒などで回しました。10センチ四方のフレームに対し24キロのライト2台をキーライトとして当てます。被写界深度、つまり、“どこからどこまでフォーカスが合うか”を照明技師と相談しながら設定して行きます。光は強烈で、ノーマル30コマ/秒に換算した時のF値は256以上にもなります。肉眼では見えないようなフレアやハレーションでも、テレシネすると映像が真っ白になってしまいますから、現場では丁寧に取り除いて行きます。フォトソニックス(注)の場合はレンズのすぐ後ろに分光プリズムがありますのでハレーションやフレアに注意しないといけないんです」
注:フォトソニックス 米国製のハイスピードキャメラ、通常の速度は24コマ/秒だが、フォトソニックスの場合は、最大500コマ/秒のハイスピードで撮影することが出来る。
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すかいらーく『バーミヤン「海老の春焼そば/海老とたけのこのあんかけチャーハン」篇』より。ハイスピード撮影で、食材が踊る。 |
――既に海外とのコラボレーションも多いお二人です。
山内 「これまでに中国や韓国、タイなどのCMを現地で撮影しました。それぞれの国で文化もやり方も違うので、確かに大変なことはありますね。現場で急に撮影プランが変更になり急いで機材を探したり。でも、おかげで日本にはないような特殊撮影用の機材が見つかったり、面白い発見もあります」
細井 「今までシズルに関しては、日本やアジアで不可能な撮影が多く、アメリカやヨーロッパに行って撮影するというパターンが多かったのですが、私自身が東京を拠点にしたこともあり、今では日本はもちろんアジア全体から、撮影のために東京へ制作者が集まるようになってきています。嬉しいことだと思います」
ザ・シズル 細井企画演出事務所のホームページ
| ● Profile. ほそい・たけよし |
| ■東京都出身。 ■写真家・西宮正明氏に師事、1980年にアームズからフリーディレクターに。その後、2000年にはThe Sizzleを設立し、フードシズル専門のプランニングディレクターになる。 ■主な作品(*は全体演出)/2008年:サントリー『港町・薄暮篇』、山崎製パン『企業「幸せな気分」篇』、キリンビバレッジ『キリン生茶』、日清フーズ『マ・マー スパゲティ「カレーパスタ」』etc、はごろもフーズ『シーチキンプラス「おいしさシズル」』、*すかいらーく『バーミヤンシリーズ』 /2007年:味の素『ほんだし「今知った」篇)、*ミニストップ『パフェ・ハロハロシリーズ』、キリンビール『キリン一番搾り「一番麦汁のめぐみ。」篇』、アサヒビール『PRIME TIME』 /2006年:東京ガス『企業「炎は味に出る」篇』、ハウス食品『プライムカレー』、韓国・オットギ食品、ケンタッキーフライドチキン、中国、上海・ピザハット、台湾・『毎日ジュース』ほか多数。 |
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| ● Profile. やまうち・やすひろ |
| ■1959年東京都出身。 ■シネオカメラを経てフリーに。 ■最近の作品/デアゴスティーニ・ジャパン『パティシエと作るケーキアンドデザート』、すかいらーく『バーミヤン「08冬、春、新メニュー」』、ケロッグ『オールブラン クラッカー』、日清フーズ『マ・マー「晩パスタ」』、キリンビバレッジ『キリン生茶』、大阪ガス『かしこい暮らし。ウィズガス住宅「Siセンサーコンロ」篇』、韓国・ソウル『ORION カスタードケーキ』、『ポカチップ』他、台湾・台北『毎日Cオレンジジュース』、中国・上海『PizzaHut』、タイ・バンコク『ダイキンドーナッツ』ほか多数。 |
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主要制作スタッフ
■広告主:株式会社すかいらーく
■代理店:株式会社オリコミサービス
■制作会社:株式会社TCJ
■プロデューサー:竹内 聡
■ディレクター:細井威良
■撮影:山内康廣
■照明:松浦正志
■美術:中野 淳
■衣装:橋倉香織
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