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私の中のあなた
(左から)キャメロン・ディアスとソフィア・ヴァジリーヴァ。『私の中のあなた』の1シーンより。
写真 シドニー・ボールドウィン/提供 ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ

『私の中のあなた』はジョディ・ピコーの小説が原作のインディペンデント作品である。キャレブ・デシャネル(ASC)はワイド画面のアナモフィックフォーマットで作品を撮影し、デジタルインターメディエイト処理はハリウッドのレーザーパシフィック社で施された。デイリー製作には同社が特許を持つ 『accurateIMAGE™ :アキュレート•イメージ(aIM:エーアイエム)』が用いられている。「HDのデイリーで、フィルムを見ているように感じられたのは、aIMシステムが初めてだよ。」とデシャネルは言う。

デシャネルとニック・カサヴェテス監督が映画化したのは、悲劇に襲われた家族にまつわる物語である。白血病を患う姉を救うために骨髄ドナーとして生まれてきた妹が、成長するにつれ、自分の出生の真実を知り、姉のライフサポート役に憤りを覚え始める。自分はどこも悪くないにもかかわらず、何度も手術や輸血を受けなければならないのだ。

オスカーに5回ノミネートされているデシャネルは作品について語る。「感情にとても強く訴えかけてくるんだ。そこに通っているテーマは、物語の基本的な描写を超越している。ニックならこういう話を甘ったるくせずに表現できるとわかっていた。彼は現実の世界のように、ストーリーに真実味を与えて理解させてくれる。この素材を高尚なものにして、お涙ちょうだいではない感動的な作品に仕上げている」

キャストにはキャメロン・ディアス、アビゲイル・ブレスリン、アレック・ボールドウィン、ジェイソン・パトリック、ソフィア・ヴァジリーヴァらが顔をそろえているが、予算は比較的限られていた。

撮影の準備段階で、カサヴェテスは魔術的リアリズムの要素を取り入れたルックについて説明したという。「この物語を通して生まれる多くの感情を全て取り込むのは難しい」とデシャネルは語る。「ドキュメンタリーのような感じにはしたくなかった。シーンのほとんどが病院とか、それっぽい所なんだ。照明に関してはそれぞれの場所に独自の現実感を与えたかったんだが、それと同時に、ごく普通で日常的というより詩的な方向に誇張もしたかった。私たちはこの映画に夢のような雰囲気を醸し出したかったんだ。物事がゆっくり動いていて、テンポがずれているように思える感じにね」

画面はアナモフィックのアスペクト比2.4:1が採用された。「ハリウッド映画の概念だと、大部分が病院で進行するような内向的なストーリーは、1:1.85で撮影するべきだとされているようだ。しかし私たちはとにかくアナモフィックのルックが気に入っている。ほかのやり方では捉えられなかったディテールを映し出すことができるからね。ストーリーが広がって人生を称える瞬間がある。そういう瞬間を典型的なイメージで表したかったんだ。私たちの判断は正しかったね」

デシャネルはパナビジョンのキャメラにCシリーズ、Eシリーズ、プリモアナモフィックレンズなど、それぞれの特性によって選ばれたさまざまなレンズを使った。そしてレンズに女性用ストッキングで作った薄いネットを付けたりもした。「そのネットはハイライト以外ではほとんど見えないんだよ。とにかくあらゆるものからエッジを取り除きたかったんだ」

昼間の屋外シーンでは、コダック VISION2 200T 5217が使用されることもあったが、ほとんどのシーンはコダック VISION3 500T 5219で撮影された。「新しい5219フィルムはすごくいいね、すばらしいよ。(コダック VISION2 500T)5218もすごく好きだったけど、さらにシャドウとハイライトのディテールが良くなったね。この新しいフィルムは領域のどちらの端もあきらめないって感じだね。ダリン・オカダのデモフィルムを見た時は、本当にびっくりしたよ」

私の中のあなた
セットで撮影をするキャレブ・デシャネル(ASC)撮影監督。
写真 シドニー・ボールドウィン/提供 ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ

デシャネルは広いラチチュードと、ハイライトおよびシャドウのディテールのおかげで、セットでの撮影が自由に行えるという。「観客に見せるもの、見せないものを決める余裕ができるんだ。とくに撮影環境のコントロールが難しいときや、使う照明の量を抑えたいときにね。いろんな意味で暗さを利用したいシーンでは、威力を発揮するフィルムだね」

典型的な例が、プロダクションデザイナーのジョン・ハットマンが美術を担当したチョコレートブラウンの壁がある居間のシーンだ。「かなり暗いけれど、それでもフィルムで見るとその壁の繊細な色を感じる。黒く潰れないで、暖かいブラウンブラックがちゃんと見えるんだ」とデシャネルは言う。


デシャネルはaIMのデイリーシステムのデモを見て、レーザーパシフィック社を選んだと語っている。このシステムは、ポストプロダクションの全工程にわたって、一貫性を保ちながら、キャリブレーションされた映像を提供できるように設計されている。デイリーを見るにはコダックのデジタルシネマサーバーが用いられた。独創的な様々な色は、ASCのカラーディシジョンリスト(CDL)をベースに各過程で忠実に再現され、ポストの工程に送られる。

「フィルムのデイリーがなくなってから、のっぺりした醜いデイリーを我慢して見るしかなかったんだ」とデシャネルは言う。「デイリー上映の時には、自分のやり方を説明し、すべては露光オーバーでもピンボケでもなくて、実際にフィルムにプリントすれば、よい映像になることをスタッフに証明しなくてはならなかったんだよ」

「コダックとレーザーパシフィック社はプリントフィルムと合うようにaIMシステムを開発していて、シャドウ部と光、そしてオーバー露光域の表現では、フィルムを見ているような気分になるくらいだ」

デジタルインターメディエイトは、色とコントラストを変えるため、最低限の範囲で使用された。映像はスピリット4Kでスキャンされ、スキャニングの工程では、アナモフィックで圧縮された画質を最大限に高めるように調整が行われた。レーザーパシフィック社のDIカラリストはマイク・ソーワだった。

「マイクはすばらしかったよ」とデシャネルは語る。「最初の段階では、ラボでの従来のタイミング方法とほとんど変わらなかった。でも気がついてみると、結局はいろんなことにこだわり始めていたんだ。いくつかのフラッシュバックのシーンでは、画面の中で観衆の注意をそれとなく導くために、エッジをぼかしたり、ときには映像の一部を暗くしたりした」

デシャネルは予算でフォーマットが決まってしまうという意見を一蹴する。「私に言わせれば、作品にとって何がベストであるかに基づいて決定を下すべきだと思うね」と彼は強調する。「まったく意味をなさない優先順位が作られているよ。ティム・オアーはノースカロライナでデイヴィッド・ゴードン・グリーン(監督)のために100万ドルで映画を撮ったけど、アナモフィックでやったんだよ。低予算の映画はアナモフィックフォーマットでは作れないと言うのはばかげている。どんな作品にも何らかの妥協はつきもので、2億ドルの映画でも100万ドルの映画でも同じことだ。どこで何を妥協するかが、結果的にすばらしい映画とどうでもいい映画の違いになるんだ」

 

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