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Love in the Time of Cholera
キャストと撮影クルー。『Love in the Time of Cholera』のセットにて。
Photo © New Line Cinema2007 / Daniel Daza

『コレラの時代の愛』(2007年)を映画化するにあたり、マイク・ニューウェル監督は撮影監督のアフォンソ・ビアトを面接し、自分が高く評価している1968年のブラジルの西部劇『アントニオ・ダス・モルテス』(注1)を観たことがあるかと訊ねた。

「ファインダーを通して見ましたよ」とビアトは答えた。1960年代末に、その作品を撮影したのはビアトだったのだ。言うまでもないが、ビアトは『ビッグ・イージー』(注2)『ゴーストワールド』(注3)『ダーク・ウォーター』(注4)『クィーン』(注5)など、60本以上の作品にクレジットされている。こうしてビアトは『コレラの時代の愛』の撮影を担当することになった。

この映画の原作はノーベル賞作家ガブリエル・ガルシア・マルケスの小説『コレラの時代の愛』である。主人公は既婚女性を愛してしまう男。それはマルケスの両親が出会い、恋に落ち、50年経って一緒になるまでを描いた小説だ。物語に登場する国はコロンビアを連想させる。物語は1900年代以前の古い習俗の社会に始まり、20世紀の近代社会へと続く。

ニューウェルがこれまで監督した作品は、『フォー・ウェディング』(1994年)から『フェイク』(1997年)や『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』(2005年)まで幅広い。彼はラテンアメリカ諸国を調査した上で、この作品をコロンビアのカルタヘナで撮影することに決めた。植民地時代の美しい建物が見事に保存されていることも理由の1つだった。

「私にとって、“カルタヘナのような土地の人たちは常に陰で生きている”との考えが重要なコンセプトだ」とビアトはマイクに話した。「昼間はすごく暑いのに、窓をすべて閉める。エアコンはないし、マドリッドやリスボンを真似てフォーマルに装う人が多い。その一方で、人々は熱帯特有の強烈な光がもたらす熱を避ける」

撮影はカルタヘナとその周辺で12週間、ロンドンのスタジオで5日間というスケジュールだった。フォーマットは3パーフォのスーパー35にデジタル インターメディエイト(DI)の組み合わせ、アスペクト比は2.4:1だった。

Love in the Time of Cholera
アフォンソ・ビアト撮影監督(ASC、ABC)とマイク・ニューウェル監督。
Photo © New Line Cinema2007 / Daniel Daza

「シネスコを選んだ理由は、1つには許されない愛を抱くこの男の孤独、もう1つはこの物語の舞台が視覚に訴えてくるすばらしい空間だということ。それを観客に見せないのは罪だろう」

ビアトが使用した機材はパナビジョンのキャメラ、プリモレンズ、コダックVISION2 50D 5201、250D 5205、500T 5218。

3パーフォのスーパー35

「私はVISION2が信じられないほどのラチチュードで映像を捉えてくれると信じていた」とビアトは言う。「撮影現場は赤道直下の熱帯なので、強烈な光が真上からくる。その光があらゆるものを平坦に見せてしまい、非常に強い影ができ、耐えられないほどのコントラストになる。現場ではあちこちをシルクで覆って、シャドウを補うためにバウンスライトを使った。同じショットで肌のトーンが3絞り分も違うことがあった」

さらにこう続ける。「フィルムには驚くほどたくさんの情報が捉えられていた。DIに持ち込んだ時は、マスクとパワーウィンドウを使ってハイライトやシャドウのディテールを浮き出させることができたよ。この点でフィルムはとても重宝なんだ」

ビアトは特定のシーンのルックをプリビジュアライズし、さらに自分の意図をロンドンにいるラッシュのタイマーとDIのカラリストに伝えるためにニューウェルと一緒に『コダック ルック マネージャー システム(KLMS)』を使った。このシステムを使うと、さまざまなフィルムストック、現像処理、フィルター、リフト、ガンマ、ゲインなどが映像に与える影響をシミュレーションすることができる。ビアトはインターンにデジカメでロケ現場とセットのスチル写真を撮らせ、キャリブレーションされたモニター上で、自ら映像を調整したり、調整の指示を行ったりした。

「この作品で文化に関して面白いことを発見した」とビアトは言う。「西欧人の色彩感覚では、コロンビアのような場所が持つ刺激的で強烈な色に対応できないことがわかったんだ。西部劇では古い写真のようにコントラストを弱めるものだと思うかもしれない。でもコロンビアでは光と色とコントラストが爆発していて、それに逆らうのは間違っているように思えた」

「でも、フレームストアCFCのDIカラリスト、アーサ・ショールにとっては、そういう色を現実感を持って受け入れるのが難しかったようだ。カルタヘナの建築には、スペインやポルトガルを経由して北アフリカから来たムーア式文化の影響が感じられる。そして信じられないほど黄色と緑の葉が生い茂っている。私はKLMSを頼りに、この色が現に存在すること、そして映画の中に取り入れたいことをアーサに納得させたんだ」

色を正しく表現する

「今日の技術を用いれば、ほぼあらゆるものを変えることができる」とビアトは言う。「ネガに記録されているものの解釈は完全に主観的だ。だからこそ、いいラッシュをつくることがとても重要なんだ。監督にとっては心強いし、俳優とプロデューサーと撮影クルーは結果がわかる。だから現場に情熱が生まれて持続する。KLMSのおかげで、ラッシュのタイマーは何千キロも離れたところにいるのに、私の視点で見ることができた。DIの段階では目標とする映像にとても近い状態になっていたから、結果として時間とお金を節約できた」

ビアトはロンドンにあるフレームストアCFCのDIルームでショールと共に1カ月を過ごした。2人はDIを使って、同じショットやシーンの中のさまざまな肌の色合いを心地よく再現するために、色温度やコントラストに微妙な調整を加えることが多かった。さらにフレーム内のブラック・リファレンスを揃えたり、観客の注意をフレームの特定の部分に引きつけるためにブライトネスを強調したりした。

「目で見た時にブラックとホワイトのリファレンスが正しくなっていれば、他の色も正しく表現される。これは絵画からきた私の映像に対する感覚の一部なんだ。純粋な濃い黒が映像のどこかに存在する必要があって、そこから残りの映像をつくり上げていく。ハイライトは人の注意を引きつける。ある意味で、コントラストがあって初めて生まれる消失点のようなものだね」

DIのおかげで、フレームストアCFCは、17歳から80歳まで年を重ねていく俳優のメイクを完成させるために視覚効果のテクニックを使うことができた。ビアトによると、メイクアップの技術者は極端な温度と高い湿度のために分厚いメイクに苦労していたが、ありがたいことにDIによってメイクを修正することができたのだ。

「私はDIが好きだ」とビアトは言う。「私の仕事の中で最も満足のいく時間だね。自分の意図したことが実を結ぶところを見ながら、それを完璧なものに仕上げるチャンスが与えられる。“自分の目標”を達成する上で、何の制作上の問題や課題もない状態で、自分の思いどおりにコントロールできる。エアコンが効いた暗い部屋で映画を見ているだけだ。これ以上何を望むって言うんだい?」
 

注1:『アントニオ・ダス・モルテス』(1969年、グラウベル・ローシャ監督)
注2:『ビッグ・イージー』(1986年、ジム・マクブライド監督)
注3:『ゴーストワールド』(2001年、テリー・ツワイゴフ監督)
注4:『ダーク・ウォーター』(2005年、ウォルター・サレス監督)
注5:『クィーン』(2006年、スティーヴン・フリアーズ監督)

 

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