flag   日本 [change]
In Camera January 2005
 TV Productions / Documentaries
Homo Sapiens
『Homo Sapiens』 の1シーン。
 

ドキュメンタリー映画 『A Species Odyssey』 (人類の叙事詩)がフランスで900万人、世界中で3000万人を引きつけて目ざましい成功を収めたあとも、ジャック・マラテレ監督とマルシア・バロー撮影監督は続編 『Homo Sapiens』 (ホモ・サピエンス)で人類の起源を探究し続けている。
 

ネアンデルタール人

「どちらの作品も真実に近づこうとしている。ネアンデルタール人とヒトの遭遇から生じた軌跡の歴史的記録はいっさいない。一時一緒に生息していたということしかわかっていない」とバローは説明している。「 『A Species Odyssey』 の最後に、ネアンデルタール人の宗教的儀式や芸術や文字の起こりを紹介しているんだが、私はそれを発展させたかった。だが問題は、ヒトは私たちと同じ人類であり、私たちは 『人類創世』(Quest for Fire)のような脚本のある映画を作ろうとしていたのではなかったことだ。この映画を信じられるものにできる公式を見つけなくてはならなかった。逸話が多すぎるとマンガになってしまうおそれがあるが、情報が少なすぎると見ている人たちはこちらが語ろうとしている話を理解できない。そこでジャックと私に共通のドキュメンタリーの経験が大事になってきたわけさ」

Homo Sapiens
原始人に語りかけているマーシャル・バロー撮影監督。
 

2人は12年以上も組んでおり、アフリカやベトナムで野生生物の映画を作ったり、辺境の文化 ― マラテレが中国とモンゴル、バローがラオスとカンボジア― を撮影したりしている。「私たちは心が通じ合っている」とバローは言う。「ジャックは直感で撮影し、ポータブルキャメラを使うのが好きで、たくさんのカットを必要とする。私はといえば、人に選ばせるのが好きだし、すごく短いシーンからシーケンスをすべて1回でカバーする撮影まで、どんなものにも耐えられる神経がある」

バローは初め写真家だったが、ニュージーランドの撮影監督アレン・ギルフォードの助手になったあと、ドキュメンタリー風フィクションやビデオクリップやオペラの世界に入り、さまざまな台本を経験してきた。「書かれているとおりには撮影できない。もっと機微を表現しなくてはならないことが多い」とバローは言う。『Homo Sapiens』 の台本は2年間の科学的研究を表現したもので、1983年からフランス大学で古人類学と先史学の教授を務めているイブ・コパンが監修している。「台本を読み通したとき、非常に暗い照明でやる方法以外は想像できなかった。重装備はこのプロジェクトに合わなかったから、照明は 2.5kW と 1200W 、575W をそれぞれ1台、18W を2台、それから肌の表面と目の深さを映し出すための金属製のレフ板をたくさん用意した」

4カ月の撮影のために6万キロ以上もロケ地を探し回ったすえ、マラテレとバローは多くのシーケンスを南アフリカで撮影することにした。「たくさんのフーテージをポータブルキャメラでやらなくてはいけないことがわかっていたので、撮影のほとんどを集中的にそこでやることに決めたんだ。ただし、スイスアルプスや中国、カナダ、そしてフランスのロケ地も使ったけれど」とバローは語っている。

マラテレとバローはこれまでいつもドキュメンタリーはフィルムで撮影してきたが、制作チームはポストプロダクション作業の終わりまで含めた予算を、フィルムとHDで比べることにした。「今のところ、満足の行く品質だけでなく、自由度や柔軟性もフィルムに軍配が上がる。実際のところとても簡単な判断だった。HDでの作業と関連する特殊効果は、4800万ドルの予算内に収まらなかっただけのことさ」とバローは言う。

バローはスーパー 16mm のイーストマン EXR 50D 7245、コダック VISION 250D 7246、そしてコダック VISION2 500T 7218を採用した。「私は 7246 がとても気に入っている。いまだにすばらしいフィルムだよ。他のフィルムとうまくつながるところがとくに気に入っている。分光感度特性もいいし、反応がとてもいいので使っていて楽しい。また7245 の彩度だと“人工的”な面を操作できる。7218 は明かりがほとんどないロケ撮影で役に立つ」。ラッシュを調整したことにもバローは言及している。

自然なイメージ

『Homo Sapiens』 のきわめて写実的な映像について思い返しながら、バローはこう語っている。「ケニアで野生動物の映画を撮影したとき、望遠レンズの反応に興味を引かれたことがあった。150mm/600mm のレンズを使って、隠れている数頭のキリンを撮ろうとしていたら、ほんの少し調整するだけで、シャープだけれど色のない映像を少しだけ暖色にしたりグリーンにしたりできることに気づいたんだ。色の彩度を補正する必要はあったけれど、自分が見ているものがプリントに出るのか、それとも私の目が補正しすぎているのだろうかと考えた」。別の2つの焦点距離でも同じことが起こることがわかって、カラーフィルターを付けずに色をミックスすることができるとバローは考えた。「この種のアイデアは直感で思いつくけれど、それに固執すると間違う場合も多い」と彼は認めている。「けれども私はそれを推し進め、選んだ色を挿入してその間に偏光プリズムを置くことを目的としたフィルタリングについての研究を始めた。照明の条件によっては運よく、収差を生じさせることなく“正しい”雰囲気を作り出すことができた。そうなれば、役者が好きなように動き回れる。私としてはぜひとも、役者にスペースをあげられるような照明のシーンを作りたい。陰の多いシーン、光がぎらぎら照りつけるシーン、そして映像内部の深い場所でもね。ぼかしの徴候が出てしまうのは好きじゃない。色の構成とコントラストは自然なイメージにつながらなくてはならないと思っている」

地形の特徴や、たくさんのロケ地が遠くて危険なところにあったことからも、バローは 『Homo Sapiens』 の撮影を1日の特定の時間帯にしか行えず、その結果、「日没時と夜明けに偏光プリズムをかなり使った。ドキュメンタリー映画では、耳を傾け目を凝らして、自分の想像力が貢献できる状況を探している。パリのマク・ガフ・リーニュが先史時代のことをわかりやすく説明するために作っているデジタル映像のことも考えなくてはならなかった。先史時代というのは言ってみれば、森の中に最初の人類が現れたとても感動的な瞬間だ」

『Homo Sapiens』 はフランス3、ボレアル・プロダクション、ピックスコムの共同制作で、RTBF(ベルギー)、TSR(フランス語圏スイス)、テレケベック、ディスカバリー・チャンネル、タン・メディア(中国)、メルショア・スタジオ(ロシア)が後援している。


| | 著作権