ビハインド・ザ・シーン
----- ダリン・オカダ氏(米国映画撮影監督協会:ASC)が語るデモフィルム撮影
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ダリン・オカダ氏(ASC) 写真:ダグラス・カークランド |
質問: コダックVISION3のデモフィルムの製作を構想するにあたっては、どのような役割を果たされましたか?
オカダ: デモフィルムでは、異なる肌色を持つボクサー2人による3部構成のストーリーが基本的な要素として提示されました。一方はアフリカ系アメリカ人、もう一方は白人で、屋内、屋外、夜、昼など様々なセッティングでテスト撮影してほしいという要望でした。それ以外はすべて私に任されていました。
質問: 個人的にどのような撮影をしようと思いましたか?
オカダ: 極端なハイライト部に対するラチチュード、最も暗いシャドウ部の色再現性、様々な色の再現など、通常の範囲を超えるライティング下で、フィルムの性能をテストしたいと思いました。監督のティム・ウェインライト氏と一緒に撮影設計を行い、新製品のコダックVISION3 5219と従来の VISION2 5218を比較で撮影しました。
質問: セットはどのようなものでしたか?
オカダ: ボクサーがトレーニングしているシーンは古い納屋と倉庫の中で撮影しました。夜のシーンは、納屋の外です。最後のショットは、倉庫の中に設けたリングで撮影しています。
質問: 撮影したフォーマットは?
オカダ: 1.85:1のスーパー35にしました。デジタルポストプロダクションのため画像をスキャンする場合、このフォーマットがネガの面積を最も有効に使えるからです。特別、新しいことではありません。最近撮影したユニバーサル・スタジオ作品は、デジタル・インターメディエイト(DI)で仕上げることがわかっていましたので、そのフォーマットを使うよう提案しました。
質問: カメラを2台並べて比較撮影したのですか?
オカダ: いいえ、今回は、新しいフィルムと5218とを比較するデモは、同じカメラとレンズで順番に撮影することにしました。
質問: その結果、どのようなことがわかりましたか?
オカダ: 新しい乳剤は、VISION2 5218よりも、オーバー露光域のラチチュードが格段に広がっていました。この比較を行った理由は、どちらのフィルムも、3,200Kのタングステン光の推奨露光指数が500だったからです。ハイライト部で、少なくとも2絞り分、露光域が広がっていることがわかりました。また、肌色はもちろん、その他の色がどのように再現されるかを探るため、さまざまな色の被写体を選びました。新しいフィルムでは、お互いの色調が混じり合うことなく、色彩や肌色が豊かに再現されています。
質問: どのような環境で撮影しましたか?
オカダ: すべてロケでした。3日間というかなり厳しい撮影日程でしたので、あまりライティングに時間を割けませんでしたが、普段の撮影現場と変わりない環境でした。リングは、本物に見えるようにライティングしました。実際のリングと同じ照明器具でトップライトで撮影し、余計なことは避けています。シャドウ部がどのように捉えられるか、ハイライト部のディテールはどのくらい保てるのかを知りたかったからです。
ほとんど暗闇に近いエリアを持つ納屋の中でデーライトの室内シーンを撮影しました。納屋の中で手前にいる被写体を捉えたショットでは、カメラをドリーに載せて撮影しています。ボクサーの動きに合わせてカメラが移動するとき、空いたドアから外光がフレームに入るようにしました。屋外の部分は約7絞りの露出オーバーです。完全に飛んでしまうことなく、ある程度ディテールが残るだろうと予想していましたが、新しいフィルムでは開いたドアから屋外にかけてのディテールや、板張りの内壁の質感まではっきりと捉えていて驚きましたね。
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ダリン・オカダ氏撮影のVISION3 5219のデモフィルムより (C) 2007 Eastman Kodak Company |
質問: その他に興味をお持ちになった点は?
オカダ: 最近、特にハリウッドの大手映画会社の作品では、大部分の長編映画がDIで仕上げられます。そのため、新しいフィルムの拡張されたラチチュードが、どのようなメリットをもたらすか興味がありました。被写体が手前にあり、ドアの外が明るい納屋での撮影は、それを試す絶好の機会でした。カラーグレーディングの時にパワーウィンドウを使って、背景の明るい部分がノーマルな状態になるまで暗くしました。最終的にできあがった映像では、色調を含めたディテールの再現、輝度が少しも圧縮された感じになっていなかったところが気に入っています。5218も最先端の技術を採用していますが、このシーンについては、新しいフィルムに比べると、非常に明るいハイライト部のディテールは少し圧縮されたように見えます。また、予想されたことではありますが、色の鮮明度も少し落ちています。VISION3では、ハイライト部の粒子やノイズも少ないことがわかりました。
質問: その他のテストはされましたか?
オカダ: 新しい5219は、5218より粒子が細かいので、1絞り増感した場合、どうなるか調べたいと思いました。結果は明らかで、タイミングされたDIを劇場サイズのスクリーンに映写してみても、粒子の増加は見られませんでした。DIでタイミングを取った後、5218と新しいフィルムのテスト撮影を並べて比較したところ、明らかに5219のほうが微粒子です。5218も素晴らしい再現ですが、新しいフィルムでは、色調に影響を及ぼすことなく、粒子が驚くほど細かくなっていました。
質問: 他にはどんなことがわかりましたか?
オカダ: フィルムは、人間の目が見ているのと同じように映像を捉えるので、私はフィルムが気に入っています。その点では、この新しいフィルムは画期的な改善がなされていると思います。5218もアンダー露光のラチチュードは広いのですが、DIを通してみて、新しいフィルムのほうが、映像がずっと安定していると気づきました。新しいフィルムでは、目立つ粒子はほとんどなく、ハイライト部はより広いラチチュードで、最も暗い領域でも最も明るい領域でも、より高い色の分解能を持っています。DIで自分の目指す映像を仕上げるには、VISION3を使うのが近道であるとわかりました。
質問: 納屋では何かライティングをしましたか?あるいは自然光のままで撮ったのですか?
オカダ: ほとんどが納屋の開口部から入ってくる自然光ですが、撮影中に移動してしまう太陽に対して、明るさを一定にするために少しだけ補助の光を使いました。
質問: 3番目の設定、夜の屋外での撮影はどうしましたか?
オカダ: 5218は夜の屋外シーンをなどに向いているという感触を持っていたので、新しいフィルムでも同じような映像が撮れるかどうか確認するため、納屋の外の暗がりで撮影してみることにしました。新しいフィルムも現行のフィルムも、私が思い描いた通りの結果でしたが、新しいフィルムはより細かなディテールを捉えていました。言葉で表すのは難しいのですが、新しいフィルムは5218の優れた要素をすべて引き継いでいる上に、いっそうパンチがあって、色の透明度も高いのです。
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ダリン・オカダ氏撮影のVISION3 5219のデモフィルムより (C) 2007 Eastman Kodak Company |
質問: 夜の屋外のシーンにボクサーは登場していますか?
オカダ: 白人ボクサーがそのシーンに映っています。私は新しいフィルムがハイライト部をどのように表現するか知りたかったので、納屋の外で顔に勢いよく水をかけてもらいました。水をライトアップするためにユニラックス・ストロボも併用しています。暗い背景の中にはその場の照明器具も含まれています。VISION3では、細かい粒子構造と色彩によって、はじめからノイズが少ないので、DI特有の副作用はほとんどゼロで、映像全体は、これまで見たことがないような素晴らしいものでした。
質問: 他にはどのような設定をしましたか?
オカダ: それぞれのボクサーに異なるロッカー・ルームを設定しました。一方は夜のシーン、もう一方はミックス・ライティングで夕暮れのルックの感じを作り出しました。背景のデーライトに蛍光灯をミックスし、もう一方は、タングステンを使いました。
質問: テスト・シーンをDIでタイミングした時に、どのようなことがわかりましたか?
オカダ: 新しいフィルムは、より細かなディテールとより幅広いトーンを記録していることがわかりました。
質問: 少し違った映像や感じを出すために粒子を増やすとしたらどうでしょう?
オカダ: それは新しいフィルムの進化のひとつです。粒子を増やして質感を高めたい時は、ラボに増感を依頼すれば、本来の色調を維持しながらそのような効果が得られます。
質問: 何か思いがけず驚いたことは?あるいはすべて期待通りでしたか?
オカダ: 一番驚いたのは、粒子の減少がDIのタイミング作業に与えた影響です。電子ノイズを起こすことなく、背景を分離し、暗くすることができたのです。見る人に気づかれずに、いくつかの場面でフレームの大部分をオーバー露光の状態にできたのです。
質問: それがあなたにとってなぜ重要なのですか?
オカダ: この新しいフィルムは、まるでカメレオンのように自由に変化するからです。どのようなルックにしたいのか、また、どのような状況で撮影するかによって、思い通りに変化してくれるのです。環境が変わるごとに、どのように撮影しようかとあれこれ悩む必要がなくなります。
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ダリン・オカダ氏撮影のVISION3 5219のデモフィルムより (C) 2007 Eastman Kodak Company |
質問: DI仕上げであることは、デモ・フィルムの撮り方に影響を与えましたか?
オカダ: 初めから、デモ・フィルムのほとんどをデジタル・インターメディエイトで仕上げることがわかっていたので、DIがフィルム出力にどう影響するか調べるため、フィルムのラチチュードを最大限にとりました。また、DIマスターから作られるプリントと、ネガから直接プリントされたものを比べてどこが違うのかを調べたいと考えました。そこでオリジナルのカメラ・ネガをDIネガの間に組みこんだのです。
質問: どのような解像度でDIへ入力しましたか?
オカダ: ネガは4Kの解像度でスキャンされた後、2Kにダウンサンプリングされたため、よりインタラクティブな環境でDIのタイミングができました。実はDIの際、あまり大きな変更は加えませんでした。主にパワーウィンドウを使ったのは、背景がオーバー露光というような最悪の状況で、特定の部分を分離して好ましく見えるよう修正したい場合のみでした。この新しいフィルムは非常にDI向きで、自然なディテール、トーン、色調を維持してくれます。このため、いとも簡単に、効率よく、ルックを微調整することができます。
質問: 純粋に光学的に作品を仕上げる場合に、この新しいネガを使いますか?
オカダ: もちろんです。VISION3は、より細かいディテールを記録できる、幅広いラチチュードを持った繊細な粒子のネガ・フィルムです。これまでレンジの広いフィルムというとパステル調で粒子の粗いルックを連想してきましたが、VISION3は、ダイレクトプリントでも、フォトケミカルでのポストプロダクションにおいても、色のコントラストや彩度にパンチが効いている点が、我々にとって大きな驚きでした。これは私の個人的な意見ですが、このフィルムは、フィルム撮影とデジタル撮影の差を拡大すると思います。
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