デジタルシネマを語る
クリス・ジョンソン氏 クラシックシネマ バイス プレジデント
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クリス・ジョンソン氏 |
ジョンソン氏は、家族が経営する単館劇場の雑用係から始めて、現在の地位を築き上げました。彼が劇場の案内係として初めて給料を手にしたのは「スタートレック」の第1作目が上映された1980年のことです。その後、1984年には劇場の支配人になります。さらに、1年後には本社に移り、主にコンセッションの購買業務を担当しました。そして現在、財務・経営面に加え、シカゴのクラシックシネマの12サイト、91スクリーンの番組編成においても中心的な役割を果たしています。
家族が映画ビジネスを始めた理由
1970年代、父は、所有する地所に単館の劇場を持っていて、その劇場を貸し出して運営させていました。1978年に突然、その経営者が「改築のため閉鎖中」の看板を出したまま夜中にいなくなってしまったのです。つまり夜逃げです。父は他の劇場経営者を何人か面接しましたが、最終的には自らやることにしたのです。残った支配人に劇場運営を任せ、父は経営面を取り仕切ることにしました。私たちは単館の二番館としてスタートを切り、1984年になって、初めてマルチプレックスを持つに至りました。それから次第に事業を拡大していったのです。
デジタルプリショーを経験して
当社は2001年にプリショーを100%デジタル化しましたが、これは業界でもかなり早い方でした。デジタル化により、プリショーの内容が面白くなり、コンテンツをより頻繁に変えられるようになりました。上映される本編のレーティングによってプリショーの内容を変えるだけでなく、今後は作品ごとに異なるプリショーをプログラムしてゆくつもりです。例えば「決断の3時10分」と「ソウ4」はどちらもR指定の作品ですが、それぞれ異なる内容のプリショーを上映するということです。また、将来はデジタル プリショーと当社のロイヤルティ・プログラム(顧客サービス)とを連動させようと考えています。誕生日を迎えるお客様がいれば、私たちはロイヤルティカードから、そのお客様がどの劇場へ入るか分かりますので、プリショー上映の際にお祝いメッセージを上映することができます。これは、当社にとってお客様は特別な存在だということをお伝えし、その人だけの特別な体験をして頂くの一つのアイデアなのです。
デジタル化に対する観客の反応
現在、当社の劇場は100%デジタルサウンドに対応しており、絶対的にアナログよりも良いと考えています。しかし以前、まだデジタルサウンドに対応していない劇場で、「ここのデジタルサウンドはいいですね」とお客様に言われました。実際はアナログなのですが、正しくセットアップしていたからこその出来事だと思います。つまり、どういう方式であれ私たちにとっては質の高い上映を提供するという本質が大切なのです。2Dコンテンツの場合、デジタルシネマと35ミリフィルム上映を比較しても興行収入の伸びは変わりませんが、上映の質を落とす余地はありません。なんとしても質の高い上映を実現しなければならないのです。
本編のデジタルシネマ化へのプレッシャー
2つのプレッシャーがあります。1つは、いつも最先端にいて、2番手ではなく業界のリーダーでありたいというプレッシャー。もう1つはデジタルプラットフォームがもたらす特典、つまり3Dや本編以外のコンテンツの上映をどうするかというプレッシャーです。この2つの要因が私たちのデジタル化を推し進めています。
映画以外のコンテンツの上映について
私はノンピークの時間帯に映画作品以外のコンテンツを上映することに賛成です。火曜・水曜の夜など、シネコンのスクリーンの一つを使って様々な内容のニッチなコンテンツを提供するのは面白いことです。プリショー用のプロジェクターまで使って、スケートボード競技会を上映したり、Xゲームのようなイベントを上映したりしました。完全なオフタイムにやったのですが、ターゲットをきっちり呼び込むことで、チケットが完売したこともあります。しかし、映画のお客様が最も増える土曜の夜に、コンサートなど映画以外のコンテンツを上映しようとは思いません。「映画興行のために私たちはいるのだ」ということを忘れてはいけないと思います。その他のコンテンツは、補完的なものにすぎないのです。
本編用デジタルプロジェクターで映画以外のコンテンツを上映することについて
プリショー用のプロジェクターでいくつかコンテンツを上映したことがあるものの、基本的にクオリティの至らないものは提供したくないのです。映画館とは、まさに人が集まる空間で、スクリーンがお客様全体をひとつに包み込む場所なのです。だからこそ映像には高いクオリティが必要だと考え、映画以外のコンテンツも全て2Kプロジェクターで上映することにしたのです。映画以外のコンテンツの多くでチケット料金は、通常の映画より高く設定されています。ですからお客様には是非「あれは凄かった」「まるでその場にいるみたいだった」と言いながら劇場を後にして頂きたいと思っています。
3Dの持つ力
デジタル3Dには本当に人を画に引き込む力があります。初めて観た時「これはすごい」と思いましたし、何度も観た今でも、すごいと思う気持ちは変わりません。人にそう思わせるにはコンテンツが必要です。「昔の3Dと、今のデジタル3Dは違う」ということを人々にどう伝えてゆくかを考え、魅力的なコンテンツで3Dを体験してもらわなければなりません。今のところ3Dコンテンツの供給が安定していないのはたいへん残念なことです。
3Dシステムのコスト、およびマルチフォーマットについて
劇場にとって3Dは付加価値があり、増収をもたらす非常に良いコンテンツですが、気になるのはマルチフォーマットであることです。例えば、「ベオウルフ」はIMAX 3D、デジタル3D、デジタル2D、そして35ミリフィルムで公開されています。では、どのフォーマットによる上映が最も優れているのでしょうか?それは誰が決めるのでしょうか?いずれ答が出る時が来るでしょうが、それはまだ先の話です。
デジタルシステムに期待すること
私たちが必要としているのは、単に映像をスクリーンに投影するだけにとどまらないデジタルシステムです。映画をデジタル上映することは当然として、劇場にあるすべてのコンテンツや様々なシステム同士を接続・管理し、ご来場のお客様に舞台裏がどういう仕組みになっているかを気づかれることなく、カスタマイズされた映画体験を楽しんでもらうことができるかということです。つまり、デジタル技術に求める究極は、 お客様へとつながってゆく“柔軟性”と“適応性”だと言えます。
上映全体の自動化について
私たちはセキュリティキーおよびスクリーンを管理し、一度コンテンツを読み込んだらそれを複数のスクリーンで上映してくれるようなシステムを求めています。また、プリショーとの統合も重要です。ですから今後は、まず本編と予告編をひとつのパッケージとして考えます。上映時間によって異なった内容を上映することもあるでしょう。そして、プリショーもパッケージとして考えます。これも上映時間と作品によって内容が変わるでしょう。さらに、ロビーのディスプレイ等も次のパッケージと考え、その時間にいらっしゃるお客様にふさわしいものをご用意する予定です。午前中は子供に焦点をあて、例えば、GまたはPG指定の予告編を流します。同時に、お子様向けのスナックセットや様々なゲームのご紹介を、予めプログラムしておいた通りに自動で流れるようにするつもりです。
信頼性の大切さについて
フィルムとデジタルの大きな違いの一つは、35ミリプロジェクターは機械ベースで、デジタルシステムはコンピュータ ベースだという点です。そのため、デジタルの場合は誰かがシステムを24時間監視することが非常に重要です。プロジェクターのランプが切れた時、システムがオフラインになった時、コンテンツが正しく読み込まれなかった時、私たちはそうした事態を知らなくてはなりません。それによって事前に対処することができるからです。順調に稼動している時は何も知らなくて良いのですが、必要な時にはどうなっているか知りたいのです。
デジタルシステムのコストと衰退について
機器を設備する上では、デジタルはフィルムに比べ高価かもしれません。しかし、フィルムシステムに伴うあらゆるコストをきちんと分類してみれば、おそらくデジタルとほぼ同額になると思います。つまり、様々なフィルムを用意し、予告編をつないだり切り離したりし、プリントをプラッター用に組み上げる作業コストを考えると、デジタルとさほど変わりないと思うのです。デジタルの場合、その柔軟性により、むしろ利益を出せると思います。ただ、最大の疑問は、動作寿命および陳腐化という両方の観点で、デジタル機器の耐用年限がどのくらいなのかという点です。10年後、35ミリプロジェクターはまだ35ミリフィルムを上映しているでしょう。しかし、私たちは短期間で“DCIの世界”に身を置くようになり、そこではすでに多くの変化が起きています。事態は多少落ち着くと思いますが、10年後、デジタルの世界で私たちはどうなっているのでしょうか?
パートナーに望むこと
まず、自分が信頼する相手が、業界に長く携わって行くことができる先であることを望みます。次に考えるのは、業界で経験があるのは誰か?質の高い映画上映とはどういうものかを理解しているか?それを絶えず向上させていく方法を分かっているか?その技術がしっかりした基礎の上に成り立っており、自社のソフトウェアをモニターし、アップグレードするためのツールを整備しているか?といったことです。その時点で最高のシステムを手に入れることができても、サポートが伴わなければ困ったことになりかねません。それから、例外や危機的な状況に対処する実力があると信じるに足る組織を見つけることですね——こうした点は必須です。
コダックとの提携について
コダックは、いつも、そう、いつでも、どんな状況であろうとも協力してくれます。問題の大小にかかわらずコダックのスタッフは努力を惜しみません。機器であろうと、コンテンツであろうと関係ありません。コダックが目指すものは、私たちの上映を実現させることだからです。パートナーが問題に直面した時は解決する——これがコダックのアプローチです。また、コダックはインフラも持っています。技術者も現場に派遣できますし、様々な状況下においてパートナーに協力は惜しみません。
システムの管理
コダックの姿勢はこうです——「弊社は、システムの用途等で一切の制限や制約をお客様には求めません。お客様のシステムですから、お客様のアイデアで自由にご使用下さい」。システムの先行投資には若干お金がかかるかもしれませんが、最終的にシステムを管理し、それを使って好きなものを上映でき、コダックがサポートしてくれることを考えたら、それは他社よりもコダックを選ぶ理由の一つになると私は思います。システムは当社の劇場にあるわけで、私はそこで起きていることは自らコントロールしたいと思っています。「いや、そんなに費用はかかりませんし、ブッキングや諸々すべて面倒見ますから」なんて言われたら少し怖いですが、コダックならそのような心配はありません。
素晴らしい映画体験の提供
映画館において、質の高い上映は当然のことだと私は思います。快適であって当たり前、良いサービスが勝つのは当然のことです。煩わしさや不快さを排除するために様々な努力をすれば、それが、よりよい映画体験に結びつくのです。それは経営方針、正しい姿勢、そして付加価値の提案のすべてにつながると思います。私たちは、全サイズのポップコーンと全サイズのドリンク類の無料お代わりサービスを実施しています。お客様がお帰りの際には「おやすみなさい。ご来場ありがとうございました」の気持ちを込めてミントキャンディをお渡ししています。また、30分保証制度も設けており、理由を問わず30分以内に退場されるお客様には、入場料を全額払い戻します。私は金銭のやりとりが生じない場面でのサービスが重要だと思うのです。常にお客様の利益を第一に考えていれば、熱心なファンがついてくるようになります。その日の売り上げがマイナスになることもあるかもしれませんが、長い目で見ると、ずっと通い続けてくれるお客様を獲得しているのです。
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